【専門職】福祉の専門家・社会福祉士とは何をするお仕事?【現役職員が解説】
皆さんこんにちは、地域活動支援センター・現役専門職の寂あまどいです。
これを見ている方々は少なからず、「福祉」について興味のある方が大半かもしれません。
福祉には役職名として、「社会福祉士」「精神保健福祉士」「介護福祉士」などいろいろな名前がありますが、これらのことをしっかり説明できる人は多くないのではないでしょうか?
実際のところ、福祉系の大学や実際の現場であっても、「これらの専門職をすべて説明できる」という人はほとんどいません。
これは私の経験からしてもそうですし、私自身、「これらの専門性は〇〇です」としっかり断言できないかもしれません。
それは、座学的な部分ではどうしてもわからない「現場的な感覚」に引っ張られてしまうからです。
私も現場にいると「専門性とは?」という部分が少々おざなりになってしまうこともありますが、ここでは改めて、現役地活専門職が社会福祉士について解説させていただきます。
皆様の「社会福祉士ってなんなの?」という疑問について、ご尽力できれば幸いですので、どうぞ最後までご覧くださいませ!
社会福祉士とは?
まず社会福祉士とは、「社会福祉士及び介護福祉士法」と呼ばれる法律にのっとって規定されている国家資格です。
社会福祉士はこちらの法律にて下記のように記されています。
難しいことが書かれているのですが、これは「高齢や障害、家庭的な問題のある人の相談援助を行い、各機関と連絡調整を行うことができる知識とスキルを持つ人たち」ということが書かれており、社会福祉士という仕事が非常に広域であり、イメージが掴みづらいものであることも同時に表しています。
上述のことからでは、「それではどこで働いているの?」という疑問が分かりづらいので、具体的にどのような場で活躍しているのかも同時に見ていきましょう。
・地域包括支援センター
・病院などの相談員
・障害福祉の施設全般
・高齢者福祉の施設全般
・児童福祉の施設全般
・地域活動支援センター
・役所の福祉課
代表的な活躍の場はこれらの施設や機関となり、「相談員」や「生活支援員」など幅広い形で社会福祉士は業務に携わっています。
これらの施設の中でも、前述のスキルを持ち合わせている人たちのことを社会福祉士とまとめて呼びます。
社会福祉士は主にどんなことをするの?
社会福祉士は福祉の専門家として、いくつか活躍の場があるということは前述の通りですが、それぞれどのような場所で、どのような活躍をしているのかを見ていきましょう。
そもそも福祉の専門職といっても、どのようなことに取り組んでいるのかということはその場面ごとで全く違っています。そのため、「社会福祉士としての仕事」というより「その職場での仕事」という方が現実に即していると言えるでしょう。
その観点から、分野別に分けて解説させていただきます。
・医療系
医療系とはその名の通り「医療現場における福祉専門職」のことを示しています。病院の相談員や地域連携を主な仕事としている人たちのことであり、下記のような場所に勤めている人のことを指します。
・病院(地域連携室・医療連携室など、場所によって名称が違います)
医療現場における相談を行う人たちは、福祉の現場や医療現場において「MSW(Medical Social Worker)・医療ソーシャルワーカー」などとして呼ばれており、下記のような仕事の内容をこなしています。
・入院している患者さんの心理的な悩みや負担の軽減
・病床数を鑑みて退院支援や退院後の生活についての支援
・患者の金銭的困難や環境的な問題に対しての支援
・受診や病院の利用に際して全般の相談支援
・地域との連携
これらを見れば分かる通り、医療ソーシャルワーカーは「患者の社会的な困難についての支援」を中心的に行っており、病気などの身体的な部分についてを治療するのが看護師や医師の役割であるのであれば、それ以外の全般的な困難さに介入・支援するのが医療ソーシャルワーカーの主業務であると言えるでしょう。
・障害福祉系
障害系は非常に幅広く、「身体障害・知的障害・精神障害の支援を行う職員」のことを示しています。前述の3障害に関わる障害者施設全般で仕事をしている社会福祉士のことであり、こちらは下記のような場所に勤めている人をこのように指します。
・各種障害の生活介護施設
・各種障害の就労支援施設
・各種障害のグループホーム(共同生活援助)
・地域活動支援センター
・障害分野の相談支援員
障害系はその分類の多さにより非常に幅広いところで、福祉の専門職である社会福祉士は活躍しています。そのため、障害に対しての専門家であるということも含め、その業務も非常に幅広いものがあります。
具体的には下記のとおりです。
・障害者に対しての生活の支援
・その現場における通常業務(生活支援員が実施している業務も勿論行います)
・現場の管理者・統括など(サービス管理責任者等、別の研修や資格を持っていることが前提になることもあります)
・本人や家族に対しての相談支援
・地域の社会資源との連携・開拓
こちらは代表的な所を挙げさせていただきましたが、障害福祉施設に関しての社会福祉士の役割は非常に広いことはここで強調させていただきます。
勿論、福祉の専門家として最前線である現場で活躍するということは、定義において記述されていた「相談支援」以外のことも業務として携わることを示しています。
もともと相談支援は「対象者のことを理解する」事が絶対的に必要ですから、支援の現場でどのような生活をしているのかを考える上で、実際の現場で勤めることは当然のように求められます。
そのため、障害福祉施設の社会福祉士は、知識や経験としての専門性を持ち合わせると同時に、「障害者の実際の支援」ということでなんでも屋として表現されることが多々あります。
・高齢者福祉系
高齢者福祉系は、その名の通り「高齢者」を対象とした福祉現場の職員として勤めている人たちのことを示します。
ここで言う「高齢者」とは、現状「65歳以上の介護保険制度の対象となる人たち」のことを言い、下記のような所に勤めている人たちを示しています。
・高齢者福祉施設全般
・地域包括支援センター
・社会福祉協議会(障害福祉に含まれることも多くあります)
高齢者福祉施設は、介護保険制度に関わる多くの場所をそのように指し示しています。
これらの分類については、介護保険制度にまつわることとして別途解説させていただきますが、今回はあくまでも便宜上このように表記させていただきます。
地域包括支援センターは、地域の中での高齢者・障害などの問題を抱えた人たちの最初の窓口になる場所なのですが、障害者の場合は「計画相談」や「相談支援センター」などを窓口にする場合が多くあり、地域包括支援センターは高齢者が主な対象となります。
また、社会福祉協議会は地域の社会資源についての仕事が中心なのですが、地域にもよるわけですが「高齢者」に対して重点が置かれている場合が多くあるので、こちらも便宜上こちらに入れさせていただきます。
当然ながら、障害者の地域資源の開拓も必要なので、社会福祉協議会は福祉全般の広域なところを示しています。
具体的な仕事の内容は下記の通りです。
・高齢者に関する相談支援
・高齢者に対して実際の直接支援
・高齢者施設の管理者・統括
・高齢者に関する社会資源の開拓や連携
障害福祉施設と似ている部分も多くあるのですが、同じような理由で「直接支援」も実際の現場では多々あります。
しかしその一方で、社会福祉士は相談支援業務を行うことができるスキルと知識を持った人材のことでもあるので、それに関しての業務を行うこともあります。
ただし、高齢者に関しての相談支援はそれに準ずる資格である「ケアマネージャー」などもあり、並列して学んでいく人材も多くあります。
・児童福祉系
児童分野に携わる福祉人材のことを「児童福祉系」とさせていただきます。こちらの分野は児童に関する福祉に関係することを指しているのですが、一口に児童福祉系といっても、その活躍の場は非常に広域です。
なぜなら、障害児や母子に関することなど、他分野に跨るものでもあり、同時に発達支援ということについても考えていかなくてはいけない場合が多くあるからです。具体的には下記のような場所が挙げられます。
・乳児院
・児童相談所
・児童自立支援施設
・児童養護施設
代表的なものがこれらになるのですが、児童福祉に携わる職員はそれぞれ「自立支援専門員」や「児童福祉司」など呼ばれ独自の肩書がついているものが多くあります。
児童福祉は、対象となる子どもたちに加えて、それを取り巻く環境(家庭・地域・学校など)に対しても積極的なアプローチが必要な場合が多く、特化的な職員を要求しているところが多々あります。
上記のなかで「児童自立支援施設」は非行などの恐れがある児童への支援を行っている場所なのですが、ここに関しては社会福祉士の資格を持っていることが条件となる「児童自立支援専門員」として活躍している人もいます。それらを含んで、主な業務内容は下記のようになります。
・児童やその保護者に関する相談支援
・児童への発達支援や養育相談
・関係他機関との連絡調整
・児童福祉に関する社会資源の開拓及び育成
ここだけではなく、社会福祉士は更生保護の観点でも少しずつ活躍の場所を広げています。
・公務員(福祉課職員等)
社会福祉士というとどうしても、「何かしらの施設」ということを思ってしまいますが、市役所などで公務員として勤める場合もあります。具体的に言うと下記のようなところがあります。
・市役所職員-地域福祉課
・市役所職員-生活保護課
代表的なところは上述のところですが、これ以外にも障害関係や児童関係の課に所属する場合が多くあるようです。
当然公務員であるため、社会福祉士に加えて「公務員試験」を受ける必要があるなどの点で一般的な公務員と変わりません。
仕事の内容は非常に多岐にわたり、市役所職員としての一般的な業務が多くなるとのことです。
また、公務員であるため国家公務員としての福祉職の枠も存在していますが、法務省や裁判所などの非常に専門性の高い場所での採用となるようです。
こちらについての具体的な業務内容は下記のようになります。
・各種福祉の増進や主体的な取り組み
・その課ごとの業務
公務員として配属される部署ごとにかなり仕事の内容は変わってくるので、簡易的にまとめさせていただきます。
・その他
社会福祉士は福祉系の職場だけではなく、近年では一般的な企業で仕事をするケースも増えているようです。まだまだメジャーではありませんが、下記のような業務内容を採用しているところがあるようです。
・社内におけるカウンセリング
・福祉的な視点からのコンサルティング業務
当然ですが、このその他における社会福祉士は勿論発展途上ではありますが、今後増えてくるかもしれませんね。
【筆者の施設】地域活動支援センターにおける社会福祉士
今までは社会福祉士の仕事について触れてきているのですが、それでは実際に地域活動支援センターの専門職として勤務している私の業務は、主に下記のとおりです。
・地域活動支援センターそのものの運営(利用者の対応や情報誌の作成など)
・地域の関わりの場として生活相談
・レクリエーション活動などの発案及び実施
・希望に応じた支援(各種障害福祉サービスの利用申請などの補助)
これらが主な業務となります。
ただし、これらの業務は地活では専門職に限らず、生活支援員と共同して行っています。私の在籍している施設では、専門職として積極的な活動をしているというより、地域生活での団欒の場の提供という事が大きなウエイトを占めています。
これには、私が在籍している施設が障害福祉サービスが明記されるよりも先に当事者によって作られた施設であった事が影響しており、地域の中で「ここ(地活)は地域の障害者の交流の場だ」という認識があったためです。
そのため、今後の専門職としての役割は「地域の中でどの機関にも繋がっていない人たちへのアウトリーチ」が中心になってくると自覚しています。
地域活動支援センターについては、当ブログでも実際に勤務している私の仕事の内容をより細かく記述・解説させていただいているので、そちらを御覧ください。
他の資格との違いは?
社会福祉士以外に、福祉に関する資格は「精神保健福祉士」と「介護福祉士」があります。
これらの資格はそれぞれ「精神障害」と「介護業務」に特化した知識を持っている人たちが取得するものですので、特に精神保健福祉士は社会福祉士と資格を取得する上で共通しているものが多くあります。
社会福祉士は広く、福祉に関する知識とそれについての相談業務を担うことができる人材であるため、精神保健福祉士と近い関係にあり、介護福祉士とはやや遠いところにあるといえるかもしれません。
それでも、社会福祉士は福祉全体の幅広い知識を持った存在であるため、福祉職の専門家としては十分な立ち位置にあるといえるでしょう。そこから更に特化的な領域になると前述の2つの資格となります。
社会福祉士とこれらの資格を同時に持ち合わせている場合は、幅広い知識と専門的な知識を持ち合わせていることになるので、より社会的な信用とスキルが保障されることとなります。
社会福祉士になるためには
社会福祉士になるためには、社会福祉士振興・試験センターにて下記のようなルートが定められています。
ここでは沢山のルートがありますが、「指定科目」と「基礎科目」を大学や養成校などで取得し、実習や実務経験を踏まえて受験資格を取得する場合が一般的です。
福祉系の大学を卒業している場合は既に受験資格を有していることになりますが、それ以外ですと在籍していた学校で全く違うルートになってきます。取得した単位などを確認した上で、こちらのルートを見ながら受験資格を確認しましょう。
まとめ
このページでは「社会福祉士とはなにか」ということを具体的な業務を中心に考えてきました。
福祉の仕事の入り口としてとても大切な資格ですが、そのことについて正しく理解できている人は存外に少ないものです。幅広い活躍の場があるということは、それだけ「どんな仕事?」と聞かれると悩ましいところがあるとは思いますが、ここで振り返らせていただきました。
こちらのページを見て、「興味が出てきた!」という方はぜひ他のページもご覧いただけると幸いです。
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