【障害解説】知的に障害があるというのはどういうこと?どのような特徴がある?知的障害について解説【現役専門職解説】
※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
日本の障害福祉には、「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つがあります。
その中でも、知的に障害のある人たちのことをまとめて呼称するしているのが「知的障害」です。
知的障害は「知的水準が他の人よりも低いため生活のしづらさがある」と理解されている人がいるかもしれませんが、障害をほんとうの意味で理解するためには、障害のことはもちろんのこと、その人自身を理解しなければいけません。
今回はそんな「知的障害」についてご紹介させていただきます。
知的障害と接する方々や、家族に知的障害を持っている人がいる方など、知的障害について知りたい方を対象に、ご紹介させていただきますので、最後までご覧いただけると幸いです。
重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。
知的障害とは?
知的障害とは、論理的な考え方や計画性などの知的能力に関する能力が低く、生活する多くの場面で支障ができている状態です。
知的障害には、他の障害種別と異なり法律的な厳格な定義はなく、はっきりと定義することの難しいものであることも伺えます。そのため現在では、教育や医療などで異なる基準が出されています。
ここでは厚生労働省における「知的障害」の言葉の意味の解説ページから、概略的な特徴について見てみましょう。
知的能力障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校や経験での学習のように全般的な精神機能の支障によって特徴づけられる発達障害の一つです。発達期に発症し、概念的、社会的、実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害のことです。すなわち「1. 知能検査によって確かめられる知的機能の欠陥」と「2. 適応機能の明らかな欠陥」が「3. 発達期(おおむね18歳まで)に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。
厚生労働省・e-ヘルスネット【情報提供】-知的障害(精神遅滞)より
これらの記述から、知的障害は下記のようにまとめられます。
・知的検査によって確かめられる
・適応機能の明らかな欠陥
・発達期(おおむね18歳まで)に生じる
ここでは「発達期に生じる」ということが書かれているのですが、最近では軽度の知的障害を持つ大人も「知的障害があるのではないか?」と考えて医療機関や相談機関に相談するケースも多くあります。
有病率は一般人口の約1%とされていますが、年齢により変化し、最近では知的障害の存在がある程度周知されているので、この割合も変化しつつあります。
現在では、知的障害の診断には「知能指数(IQ)」と呼ばれる知的能力を数値として判断する指標が使われており、場面ごとに異なりますが「IQ70未満(平均が100とされています)」が基準とされています。
下の表は、厚生労働省の調査でなされた知的障害の一つの基準表です。
すべてがこの通りではないかもしれませんが、一つの認識としてはイメージがつきやすいでしょう。
知的障害はあくまでも「知的能力」という部分に関するものですが、実際には発達障害を併発しているケースや、軽度の知的障害が発見されなかったために二次障害として精神障害を併発しているケースもあります。
それではここまでのことをまとめてみましょう。
・知的能力には論理的な考え方や計画性、計算や抽象的思考、判断など、色々な種類に分けることができる
・知的能力は「IQ」によって基準とされ、「70未満」で知的障害と判断される
・重度なほど発見が早い傾向にあり、軽度なら発見されずに大人になる場合もある
・大人になってから知的障害が判明することもある
・二次障害で精神障害を併発しているケースもある
知的能力の3つの領域
一言に知的障害の特徴といっても、知的障害には程度にかなり差があり、「軽度」「重度」「最重度」というような区分けがなされる場合があります。
これらの区分けは、数値化された「IQ」の数値によって大まかに判断される事があり、下記のような表による基準もあります。
しかし実際には、知能に関する分類として、現在の診断基準として使用されているDSM-5では、知的能力を下記の3つに分けて考えられています。
こちらも厚生労働省のページから意味について引用させていただきます。
概念的領域:記憶、言語、読字、書字、数学的思考、実用的な知識の習得、問題解決、および新規場面における判断においての能力についての領域
厚生労働省・e-ヘルスネット【情報提供】-知的障害(精神遅滞)より
社会的領域:特に他者の思考・感情・および体験を認識すること、共感、対人的コミュニケーション技能、友情関係を築く能力、および社会的な判断についての領域
厚生労働省・e-ヘルスネット【情報提供】-知的障害(精神遅滞)より
実用的領域:特にセルフケア、仕事の責任、金銭管理、娯楽、行動の自己管理、および学校と仕事の課題の調整といった実生活での学習および自己管理についての領域
厚生労働省・e-ヘルスネット【情報提供】-知的障害(精神遅滞)より
これらの3つの領域をある程度理解しないと特徴を考えるのは難しいです。
実際の程度は、これらの概念から、実際の生活の苦しさや、困りごとなどから包括的に考えていく必要があります。
知的障害のある人の特徴
3つの領域のどの部分が実際に障害されているか、あるいは機能的に難しいかによって知的障害の重さを判断することが多いのですが、知的障害にはある程度共通した特徴も多くあります。
知的障害は前述の通り、3つの領域に分けて考える事ができるのですが、それぞれ下記のような特徴になって表れることが見られます。
下記は知的障害を持った方々と関わった経験から、筆者が感じたことをまとめていきます。
そのため、今まで出典を明示していましたが、ここから先はあくまでも「主観」と「経験」の要素が入ります。
あくまでも参考にまでご覧いただけると幸いです。
-概念的領域(記憶・言語・実用的な知識認識)
概念的領域は最も一般的に言われるような「頭の良さ」のイメージに近いです。
知的障害においてこれらの領域の能力は人によって特にまちまちであり、記憶に関する全般が苦手なのに、数字記憶やエピソード記憶が秀でていることがあります。
このようなことから、一概に「知的障害があるから記憶ができない」と決めつけることは早計であり、「記憶できる部分に偏りがある」という見方をするほうが良いかもしれません。
筆者の関わったことのある利用者には、「昨日の出来事は曖昧だけど、作業書の職員や利用者、のべ50人以上の誕生日をすべて記憶している」という人もいます。
このような部分から、知的障害のある人の概念的領域は、下記のような特徴があると言えるかもしれません。
・一般的な言葉をそれぞれの解釈で使っている
・部分的に記憶力が優れている(誕生日の日付・好き嫌いなど)
・新しい場面に対して過剰に反応する
社会的領域
社会的領域は知識などから一つ進んで、「社会性」に関連する知的能力全般のことを示しています。
学校や社会では、当然「コミュニケーション能力」というものが重視され、「自分が思っていることを相手に適切に伝えること」や、「相手や集団が感じていることを伝える」などの能力がこれらに当たります。
もっと広く言えば、例えば多くの社会で「良くしてもらえばお礼を言う」という慣習がありますが、これらを理解する事ができる力も、社会的領域と呼ぶことができるでしょう。
知的障害を持った方々は特にこの部分が苦手であり、「自分以外の他の人のことを考える」ということが多くの場面で難しいことが多くあります。
これは知的能力の中で「存在しないものを考える」という部分が弱いということが原因にあるとされています。これらのことから、社会的領域は下記のような特徴があるといえるかもしれません。
・特定の物事に対して本人なりの解釈をして固執する
・他者の気持ちを理解することが極めて難しい
・自分の気持ちや行動の客観視はほとんどできない
-実用的領域
実用的領域は、前項の2つの部分を組み合わせて、より実践的な社会活動ができるかどうかということです。
日常的に仕事をする上では、「仕事を理解する」「仕事に対しての責任を感じる」「仕事のために自分の健康管理をする」など色々な出来事が必要になってきます。
これらを事するためには「社会的な慣習を理解する」や「仕事で必要なことを予測して行動する」などの能力が必要になるため、知的障害のある方々が完璧にこなしていくことはかなり困難になってきます。
実際の現場では、勿論知的障害のある方々ができる形で取り込める仕事を提供する「就労継続支援」というサービスもあり、それぞれに合わせた作業をすることができる場所も増えています。
しかしながら、適切にそれを提供していくためには、しっかりとそれぞれの特徴を理解する必要があります。
以上を踏まえると、実用的領域には下記のような特徴があるといえるかもしれません。
・責任や仕事の解釈が独自であり、柔軟な対応ができない
・自分のこだわりや感情の振り幅が大きく必要な自己管理(健康管理など)ができない
・自分以外を客観的に見ることが難しいため社会のルールの理解が非常に難しい
知的障害の方が利用できる福祉サービス
最後に知的障害の方が利用できるサービスについて解説させていただきます。
知的障害のある方が利用できるサービスは下記のようなものがあります。
・障害福祉サービス
・障害年金
・療育手帳
これらのサービスについては個別で紹介させてもらっているページがありますので解説は感嘆にさせていただきますが、大切なこととしてそれぞれ「生活の質」や「日々の生活の助けになる経済的な支援」を受けることができます。
これらのサービスの使用には「各自治体ごとの申請」や「自分で利用申請をしなくてはいけない」など課題は多くあるのですが、それでも生活の質を大幅に向上させる事ができるため、使わないという選択肢はありません。
使うことができる制度をしっかり利用して、高い生活の質を心がけましょう。
とはいえ知的障害を持ってしまっていると、自力でそれらをすることはかなり難しく、また主な支援者となる家族も負担が多くなりがちです。
そのためこれらの申請にかかる支援は、それぞれの地域の相談支援事業所に連絡して助けてもらうのが良いかもしれません。
これらのサービスは内容が微妙に地域ごとで異なっているため、利用の際は必ずそれぞれの地域で確認をしてください。
まとめ
・知的障害に法的な定義はなく、分野によって異なる基準がある
・知的障害は知的能力の欠如によって生活が困難になっている状態のこと
・知的能力には、①概念的領域、②社会的領域、③実用的領域、の3つがある
・知的障害の人は独自の解釈や捉え方をしていることがほとんど
・障害福祉サービスの対象となっている
今回は知的障害について解説をさせていただきました。
知的障害はその基準が未だはっきりされておらず、また対応に困っている人もいるかも知れません。
しかしながら、今回解説させてもらったように、相手のことをしっかりと理解して、相手に合わせて関わりを持っていくことが大切になります。
このサイトでは、「障害福祉」に関する様々な情報を発信しています。身近な人で障害を持っている人がいる、障害を持ってしまったけれどどうしたら良いかわからない、人たちへ適切な支援につながる事ができるように、これからも適切なソースに従って記事を投稿を心がけています。
良ければ他の記事もご覧いただけると幸いです。
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