【実習って?】社会福祉士・精神保健福祉士の実習は何をするのか。辛いときはあるどうする?【現役福祉専門職が解説】
福祉の専門職である「社会福祉士」は、その習得過程で福祉施設や病院機関での実習が必要になります。
筆者が勤めている地域活動支援センターでも同じように実習が行われることがあり、私も下記の実習に立ち会ったことがあります。
・相談援助実習(社会福祉士)
・精神保健福祉援助実習(精神保健福祉士)
・精神看護実習(看護師)
主に地活で行われている実習はこれらになります。
この中でも「相談援助実習」は、社会福祉士・精神保健福祉士に必要になる実習であり、筆者もこれらの実習を経て現在専門職として勤務しています。
私は看護師ではないので、精神看護実習については詳細についてわからないのですが、この記事では相談援助実習について、地活職員の観点も交えて解説させていただきます。
重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。
相談援助実習とは
相談援助実習(以下社会福祉士実習)とは、社会福祉士において必修とされている実習です。
こちらは具体的に時間数が指定されており、社会福祉振興会において下記のように定められています。
この実習は福祉系の大学において「必修科目」として卒業要件としている場所もあり、社会福祉士や精神保健福祉士を目指す大学機関では比較的メジャーなようです(筆者の出身大学でもそうでした)。
当然筆者も、実際にこの実習を経て社会福祉士になっているわけなのですが、実はこの実習は、行く場所によってかなり内容が異なります。
実習先には「実習指導者」がいる福祉機関や事業所で行われるのですが、勿論基準として実習ですることはある程度決まっている一方、内容はかなりその場所の特色に左右されます。
下記は筆者が社会福祉士実習を行った際に「実習先」となっていたリストです。
・高齢者施設(有料・特別老人ホーム・老人保健施設)
・障害者施設(就労系・生活介護・相談支援事業所)
・児童施設(育児院)
・地域福祉施設(地域包括支援センター・独立系福祉事業所・社会福祉協議会)
・病院(それぞれの病院の地域連携室・医療連携室)
大きく分けるとこのようなところでの実習先があります。
これらの実習先にて、おおよそ1ヶ月ほどの実習を行います。
精神保健福祉援助実習とは
上述の実習は社会福祉士になるためのものでしたが、こちらは精神保健福祉士になるためのものです。
社会福祉士の実習と比べると、分野が「精神分野」に特化したものになり、更に実習の時間数が増え、複数の場所での実習が必要になると、字面だけみると社会福祉士よりもハードルが高くなります。
実際筆者の大学では、精神保健福祉援助実習のハードルの高さから、「社会福祉士の実習を実施した後、希望者が履行することができる」というものとなっており、途中で離脱する人も多くいました。
実習先は下記のようなところがありました。
・病院(精神科病院の地域連携室・医療連携室など)
・就労継続支援事業所(A・Bどちらも)
・共同生活支援事業所(グループホームなど)
・生活介護施設
・地域活動支援センター(精神障害を中心にした場所がほとんどです)
このような場所が中心になります。前述の社会福祉士と比べると、その殆どが精神障害分野であることも頷けますね。
実際にはここから「医療機関」と「地域施設」の2つを特定の時間数分実習を行うことで履修済みとなります。
実習の流れ
ここで言う「実習」とは社会福祉士・精神保健福祉士の実習のことを示していますが、どちらも概ねの流れは変わりません。
また、実習の流れはそれを履修する大学や専門学校、スクーリングなどでかなり異なるので、ここでは「筆者が卒業した大学での流れ」に焦点を絞って記述させていただきます。
① 実習先の決定(担当の教員が振り分けます)
② 演習などを中心とした事前学習(実習先に合わせて内容を変えます)
③ 実際の実習(場所場所によってプログラムは異なります)
④ 実習中における振り返り学習(担当教員と部分的に振り返ります)
⑤ 実習終了後の学習まとめ(学習内容をまとめて発表)
このような流れになります。これは精神保健福祉士実習でも変わりません。
どの実習においても大きく異なっているのは③の部分で、これについては実習先の事業内容や担当指導者の考え方で全く違ったものになります。
実習先について
社会福祉士・精神保健福祉士の実習において、「実習先」は非常に重要な要素になります。
なぜなら、どちらの実習も実習先が内容を殆ど決めるようなものです。基本的には各施設の特徴に応じた内容になるのですが、その内容には非常に差があり、場所が違えば全く違う実習になります。
具体的な実習の内容は、それぞれの施設に加えて、実習担当教員や実習指導者がある程度の要綱に則って決めるものなのですが、基本的にそれが重なることはほとんどありません。
実習そのものの印象はかなり変わることは間違いないのですが、概ね下記のような順序を踏むことが多くあります。
・利用者との関わり
・各利用者の支援計画(その人にとって必要な支援の方向性)の作成
・作成した成果物のフィードバック
・実習のまとめ
このような流れで進むことがほとんどで、その過程でそれぞれの実習指導者の個性や指導の方向性によって変わっています。
地活での実習
それでは地活での実習はどうでしょうか。
実は地活はその特徴から、継続的な実習がなかなか難しいものがあります。その理由は下記のとおりです。
① 連続して利用する人が少なく、場面ごとで利用者が異なる
② 事業所としての介入が間接的なものが多い
地活は一般的な事業所と比べると介入がかなり限定的です。そのため、継続した実習には不向きな要素があり、そのため「一日限定」や、「色々な実習の一部」として扱われることが多くあります。
地活はその特殊性から、たくさんの要素のある利用者が多くおり、かつ地域での生活をされている方がいるので、その人達とのコミュニケーションを取ることを中心としたものがほとんどです。
意識するところ
実習の際に意識することは、場所は違っていてもある程度共通していると考える事ができます。それが要綱として出ているのですが、実際はそれぞれの専門職が考える「大切なこと」というものは思いの外違っていたりします。
基本的に福祉の仕事は、「対人」のものになるので、確実な答えが存在しません。
そのため、担当指導者が考える理想的な支援を教わることになっていくことになるので、その人がどのような環境で過ごされているかでかなり違います。
そんな中で、私が考える意識するべきところは下記のように感じています
① 各施設・事業所の特徴の理解
第一に知識として、「各事業所の特徴の理解」が一つの要素であると考えています。
当然ながら、実習に来るまでに福祉に関する知識については勉強済み、ということが大前提なのですが、実際勉強をしていくと字面だけ見て「この事業所はこんなことをしているんだ」と理解できる人は殆どいないでしょう。
というのも、福祉の事業所は制度面では事細かに書かれているのですが、各自治体や取り組む法人によってかなり違いがあります。
そのため、各事業所の制度的な特徴を押さえても、そのイメージが明瞭でないことが多くあります。
そのため実習を通じて、実習する施設がどのような事業所か、それを適切に学ぶことは大切であると言えるでしょう。
② 利用者・職員とのコミュニケーション
恐らくここがメインとなることもある部分であると思うのですが、「利用者・職員との関わり」は重要なところです。
これが実習においてもっとも実践的な部分になることでしょう。そしてここの部分が実習指導者としては最も意識してほしいところでもあると思います。
基本的に対人の仕事である福祉の仕事では、「人に慣れておく」ということはとても大切になります。座学では学ぶことができない要素がてんこ盛りの実習ということも相まって、ここを意識してもらいたい人は多くいると思いますし、筆者も同じことを思います。
ただしここが最も心がすり減る疲弊ポイントでもあるので、しっかり全ての実習を終えることができるようにメンタルケアをするのも大切な要素であると言えます。
③ 基本的な支援の流れと種類の理解
福祉は人のことを支援する仕事です。しかしながら、そのための支援の方法や流れはそれぞれの職種で全く異なるものがあります。
社会福祉士や精神保健福祉士は、「相談」を中心として行うのですが、それであれば広域的な福祉の仕事に対応することができない場合もあります。
特に実際の現場において、社会福祉士や精神保健福祉士は実際に現場に出て直接的な支援を行うことがあります。そこに対応するためにも、ある程度広い支援の方法を理解しておくことは必要になってくるでしょう。
私が実習において意識することは上記のようなものです。
重ねて申し上げますが、これらは一社会福祉士である私のご意見ですので、「それ以外にも実習には大切なことがある」ということがある人達は大勢いるかと思います。あくまでも参考までに御覧ください。
辛いときは
当然ですが、どちらの実習においても「つらいな……」と感じる場合は多々あります。
実際、社会福祉士・精神保健福祉士の実習は「対人」のものになるので、精神的な負担がかかることが多々あります。
私が実際に聞いたことがあるトラブルは下記のとおりです。
・実習指導者と反りが合わなかった
・実習先の職員との関わりがうまく行かなかった
・毎日の課題が辛くて精神的に追い詰められた
・単純に利用者との関わりがうまくいかなかった
これらはあくまでも私が聞いたもののなかでも氷山の一角だと考えています。これらのトラブルは基本的に日常茶飯事であり、それらを乗り越えて実習を終えることが常に求められます。
そんなときはどうすればよいか?
恐らく具体的な方法は多くあるかと思いますが、私が第一に明言できることは「しっかり相談する」ということです。
非常に淡白な対処法かもしれませんが、これは実習を経験し、かつ現在も福祉施設に勤めている私の個人的な見解の中では最も有効的であると判断しています。
実際に話す人は「実習指導者」「実習担当教員」のどちらかが基本的には良いでしょう。これの例外は「どちらとも人間関係ができていない」という状態ですが、おおよそ実習担当教員は殆どの場合で中立ですし、相談先としては適切です。
どうして「相談すること」をおすすめするかというと、福祉は「対人における仕事」を多かれ少なかれ理解されているからです。
対人の仕事は基本的に「合う合わない」があります。どんなに優秀な人間であっても、「なんとなくこの人とは合わないな」と感じることを多くあります。そのため「どうしても合わない人がいる」ということを理解されています。
指導者・教員はどちらも「福祉人材を育成すること」を目的にしていますので、当然ながら「実習が中止になる」ということはどちらもメリットが在りません。
その合理的な理由から踏まえても、しっかり「言葉で相談してみる」ということは非常に大切な考え方です。
確かに一歩踏み出して、しっかり説明することは負担がかかりますが、悩み事があればぜひご一考してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は地活で行われている実習から、私の専門分野である「社会福祉士実習」と「精神保健福祉士実習」について解説しました。まとめると以下のようなものになります。
・社会福祉士と精神保健福祉士はそれぞれ時間数や実習分野が違っている。特に精神保健福祉士の実習は、医療機関と地域施設の2箇所が必要。
・実習の内容は実習指導者や実習先で全く異なる。
・実習で押さえておきたいポイントは「事業所の理解」と「対人コミュニケーション」と「支援の流れと種類の理解」を中心に。
・辛いと感じたらすぐに指導者、もしくは担当教員に相談する。
社会福祉士・精神保健福祉士の実習はとても大変です(勿論、専門職の実習とは大変なものなのですが)。
しかし、そこを受け入れる人間もある程度「同じ職種で働いてほしい」という気持ちがあるかと思われます。そこにはきっと、実習をする人たちに対しての敬意や願いが少なからずあると断言できます。
むしろ、実習を受け入れておいてマイナスな態度を取られることは、率直に受け入れる体制の問題でもあるので、そこについては実習する側がしっかりと伝えるべきだと考えています。
そこも含めて、実習という勉強であると言われればそれまでですが、私個人の気持ちとしては、せっかく「専門職の実習」として銘打っているのですから、そこをしっかり学んで帰っていただきたいと思うのが専門職の考え方なのではないでしょうか。
もしこれを見ている福祉職を希望する方々に、少しでもお役に立てれば幸いです。本日はご覧いただきありがとうございました。
これ以外にも、福祉や私が勤めている地域活動支援センターでの日々なども記事にさせていただいておりますので、ぜひその他もご覧いただけると幸いです。
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