【障害福祉解説】そもそも「障害を持っている」というのはどういうこと?4種類の障害まとめ【現役専門職員解説】
※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
日本の福祉制度には、高齢者や児童、障害を持つ人たちを対象に提供されることが多くあります。
そんな中でも、筆者が専門としているのは障害福祉の分野なのですが、そんな中で福祉のことをよく知らない人から「障害って具体的にどういうことなの?」と聞かれることがあります。
福祉の現場ではあまりにもありふれた言葉ではありますが、実際考えると、「障害とはどういうことを指しているのか?」ということが、意外に浸透していないと筆者は感じています。
今回は障害福祉の基礎の基礎、「障害とはなにか?」ということを解説させていただきます。最後までご覧いただけると幸いです。
重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。
障害とは?
福祉には障害に関する言葉の定義が非常に多くありますが、実は福祉の「障害の定義」は直感的な書き方がなされていません。
一口に障害と言っても、障害には下記のような種類があります。
・身体障害 ・知的障害 ・発達障害 ・精神障害
これらはすべて異なる状態ではありますが、共通的なこととして「日常生活が困難な状態にある」ということです。
「障害を持つ」と聞くと色々なイメージがあるかもしれません。
その中で最も重要なのは「日常生活で困っている」ということであり、「病気を持てば全員が障害者になる」というわけではありません。
問題は、「病気が原因で日常生活で困りごとがある」という状態こそにあるのです。
現在では生涯の考え方はこれが基本になっており、「ICF(国際機能分類)」という概念になって福祉の基本知識として考えられています。
ここからはそれぞれの障害を、各定義から考えていきましょう。
身体障害
身体障害の定義は「身体障害者福祉法」に規定されています。以下は厚生労働省よりの参考資料から引用したものです。
身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)
厚生労働省「障害者の範囲」 「障害者(児)」の定義に関する規定の状況 より
(身体障害者)
第四条 この法律において、「身体障害者」とは、別表(※)に掲げる身体上の障害がある十
八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
※別表に定められている障害の種類
①視覚障害、②聴覚又は平衡機能の障害、③音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害、
④肢体不自由、⑤内部障害
これを見てみると、身体障害とはイメージする「手足の欠損」などだけではなく、下記のような状態でも当てはまることがわかります。
・内部障害によって患った人工臓器(ストーマ・ペースメーカーなど)
・耳や目などの障害(視覚・聴覚の障害)
・四肢の不自由
・特定の難病など
身体障害はそのまま、「体の機能にトラブルが起きて医療的な処置がないと日常的な生活が困難になる」という意味合いです。
身体障害は当然ながら、知的や精神的な部分に障害があるわけではありません。あくまでも身体機能そのものの障害を示しているわけですが、そのため「障害を患った」という精神的なダメージも考慮する必要があります。
まとめると下記のような特徴があるといえるでしょう。
・身体的な部分に障害があり、密な医療的処置が必要な場合がある
・知的、精神的な部分でダメージはなく「障害への負担」が大きい
・身体的な部分で障害があるため、環境面への配慮をする必要がある
知的障害
知的障害の定義は福祉法の中では明記されていない特殊な障害です。
知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)
厚生労働省「障害者の範囲」 「障害者(児)」の定義に関する規定の状況 より
※ 「知的障害者」の定義規定はない。
(この法律の目的)
第一条 この法律は、障害者自立支援法 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知
的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するととも
に必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。
知的障害の定義が明記されていないのには色々な理由があるとされていますが、これについては非常に専門的な話になるため、簡単に「基準が明記できるほど単純なものではない」としておきます。
なにせこの問題は、その道の専門家が長時間かけて解説することでもあるので、簡単な解説を心がける今回は省略させていただきます。
しかしながら、全体的にまとめられた定義はないとはいえ、場面ごとに適宜決められているものもあり、「生活の基準と比較して、知的レベルの低さから困難がある時に知的障害者と定義する」ということがあります。
そもそも知的障害とは、簡単な表現をすると「日常的に使用される知能(IQ)が標準的なレベルよりも低い」という状態を示しています。
知的障害は診断基準が非常に難しく、単純に「IQが低い」と言ってもそれが直接「生活のしづらさ」に直結するわけではありません。
「知的能力」というと単純ですが、簡単に分類分けするだけも下記のようなものに分けることができます。
・概念的領域(言語能力・記憶力・計算など)
・社会的領域(対人コミュニケーション能力)
・実用的領域(金銭管理・自己管理)
人の知的水準というものは、これらをまとめたようなものなので、単純に数値化できるものではありません。
知的障害は上記の知的水準が低いため、「日常生活に困難が起こっている」ことを示します。
知的障害は定義の複雑さはありますが、主に下記のような特徴があると言えるでしょう。
・知的レベルが低い傾向にあるため、伝え方に注意する必要がある
・他者と上手くコミュニケーションが取れず精神的な負担が大きくなる傾向にある
・発達障害を併発する可能性がある
・複合的な障害がある場合に誤診を受けやすい
発達障害
発達障害の定義は下記のとおりです。
発達障害者支援法(平成16年法律第167号)
厚生労働省「障害者の範囲」 「障害者(児)」の定義に関する規定の状況 より
(定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎
性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であっ
てその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活
に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
具体的な定義の中で出てきた「自閉症」や「アスペルガー症候群」など具体的な名前が挙げられています。
いくつか名前が出たのですが、現在代表的な発達障害は下記のとおりです。
・自閉症スペクトラム障害
・AD/HD(注意欠陥・多動性障害)
・LD(学習障害)
発達障害は知的障害と同列に扱われることがありますが、実際には発達障害と知的障害の関係は難しいところがあります。
上記のなかでも、「ADHD」や「LD」などは知的に障害がないとされる場面もあり、その診断はやはり知的障害と同じく難しいものがあります。
発達障害は「脳機能の偏り」と呼ばれることがあります。人間がバランスよく脳を活用している状態が「普通」なら、発達障害はそれが偏っている状態という仮定をされる考え方が現在の主流のようで、筆者も同じように感じることが多くあります。
発達障害は最近出てきた概念であり、他の障害と比べるとかなり新しいものです。
そのためほんの数十年前までは、「知的障害」や「精神障害」などと混雑した考え方に分類されていました。最近では、「成人して初めて発達障害が発覚した」ということもあります。
発達障害は知的な能力が極端に低く出るわけではなく、むしろ問題がなかったり、特筆して高い知能を持っている場合があります。
発達障害は発達の過程での問題であり、コミュニケーション能力などの社会的な関わりの面で難しいことがあります。最近では発達障害へのサポートも手厚くなってきてはいますが、知的障害と混合する場面もあり、円滑なサポートが難しいケースもあります。
発達障害はイメージが掴みにくいながら、「なんとなく他の人と違う」という感覚を持つことがあります。具体的には下記のような特徴があるといえるでしょう。
・テストの成績は良いのにコミュニケーション能力に難がある
・発達の上で他の子どもと違うところがある(言葉に詰まる・勉強の上で極端に苦手なところがある)
・コミュニケーションのすれ違いから二次障害が生じやすい
発達障害はまだまだ発展途上の分野です。そのためいち早く、サポートへとつなげることが大切になります。
精神障害
精神障害の定義は下記のとおりです。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)
厚生労働省「障害者の範囲」 「障害者(児)」の定義に関する規定の状況 より
(定義)
第五条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はそ
の依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。
こちらも発達障害と同様に具体的な疾患名が並べられており、代表的な病気が挙げられています。
精神障害はその病気ごとによりかなり特徴が異なり、一口に表すことのできない性質があります。
度々挙げられるのは下記のような症状です。
・幻聴や幻覚など精神病を原因とする症状が見られる
・意欲の極端な低下や行動することの困難さがある
・突発的な意識障害や社会的にそぐわない行動がある
勿論これらはあくまでも「代表的といわれているものの症状」です。
実際に精神障害がある人たちというものは、症状に加えてその人それぞれの性格的な特徴が加わることにより、症状はかなり多様になります。
そのため、知的障害や発達障害のように、共通した部分がわかりやすいものではなく、あくまでも共通した部分はあるけれど、そこから大きく派生したものというイメージがより適切です。
精神障害はその特性ゆえ、特徴の列挙がかなり難しいのですが、共通的な部分を列挙すると下記のようになります。
・精神的な負担が原因により発病する可能性がある
・バランスよく生活することが困難になり、自分のケアがわからなくなる
・知的障害や発達障害の二次障害として起こる可能性がある
精神障害はいわば「上手に休息を取ることができなくなる」という状況です。
そのバランスの取りづらさこそが、一つの大きな特徴になります。
まとめ
今回は「障害」に付いて各種まとめさせていただきました。
一口に「障害」と言っても、その種類は意外にも多かったのではないでしょうか?
この記事ではあえて特徴的な部分について列挙させていただきましたが、当然ながらそれぞれの障害の本質的な理解はできません。
と言うより、障害を理解するということは本質的には「その人のことを理解する」ということなのかもしれません。
この記事を見て少しでも障害についての正しい知識が広まれば良いと感じています。
このブログでは、障害福祉に関する様々な情報を、確かな精度で配信していくことを目的にしています。
福祉に関する他の記事も、ご覧いただければ幸いです。
このサイトでは、「障害福祉」に関する様々な情報を発信しています。身近な人で障害を持っている人がいる、障害を持ってしまったけれどどうしたら良いかわからない、人たちへ適切な支援につながる事ができるように、これからも適切なソースに従って記事を投稿を心がけています。
良ければ他の記事もご覧いただけると幸いです。
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