【障害福祉解説】障害者手帳とはどんな種類がある?どんなメリットがあるの?3種類の手帳を解説【現役専門職解説】

2024-02-23

 ※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。

 障害を持ってしまったとき、真っ先に思いつく制度はなんでしょうか?

 福祉の勉強をし始めた大学生の時、なんの知識もない筆者が考えたのは「障害者手帳」でした。

 全く知識がない状態からでも、「手帳」という制度が浮かぶくらいには、日本社会では「障害者手帳」というものはある程度一般的なものなのかもしれません。

 しかしながら、改めて「障害者手帳」のことについて知っている人はどれくらいいるでしょうか。

 それを踏まえて今回は、「障害者手帳」というものを振り返って考えていきましょう。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

障害者手帳とは?

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 障害者手帳は、ある一定レベルの障害を持つ人たちへ経済的な支援や、各種福祉サービスを受ける手助けになるなどあります。

 障害者手帳と一言で言っても、その中身は下記の3つのことを示しています。

障害者手帳の種類

・身体障害者手帳
・精神障害者保健福祉手帳
・療育手帳

 これはそれぞれの障害種別に対応しています。

 各障害種別に応じた手帳を持っていることで、色々な経済的な支援を受ける事ができるのですが、持っていることで効果を発揮します。
 全てをまとめた表については下記のとおりです。

厚生労働省:障害者手帳についてより

 障害者手帳は上記の表に対応したようになっています。

 しかしながら、障害者手帳によって受けることができる恩恵というものは、自治体によって異なります。

 障害者手帳は確かに素晴らしい制度ですが、この自治体によって異なるという部分はややマイナスの要素であると言えるでしょう。

 とはいえ障害者手帳を持っていることのメリットは大きく、デメリットがあるわけでもないので、「障害を持ったときにはとりあえず手帳の申請を考える」ということは大切です。

障害者手帳の効力について

 障害者手帳は申請をすることで取得する事ができるのですが、その手帳の効果というものは、前述の通り「場所によって違う」というものになります。

 一見「え? どうして場所によって違うの?」という疑問になると思うのですが、これには「自治体が実施主体になっているから」という理由があります。

 難しい言い方をしているのですが、これはつまり「手帳という制度は各地方自治体が中心に手帳の効果を決めている」ということです。

 そのため、それぞれの場所で受けることができる経済的な支援に若干の差があります。それでもある程度、受けることができる経済的な支援は共通の部分も多くあります。

 具体的なものは下記のような支援を受けることができます。

障害手帳の効果

・医療費の助成
・各種税金の控除(所得税・住民税・ゴミ袋等の控除)
・公共交通機関の軽減
・公共施設の利用の軽減(博物館や科学館、動物園など)
・NHK受信料の減免

 これらをすべて受けることができるかは、お住まいの地域で変わると思われるのですが、概ねこれらが期待できます。

各種手帳の対象について

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 障害者手帳といっても、その種類は前述した通りいくつかあります。

 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳はそれぞれの障害種別を表しているわけなのですが、その範囲はとても細かく決まっています。

 中には「これも対象に含まれているのか」ということもあるかもしれませんので、それぞれをまとめさせていきましょう。

身体障害者手帳

 身体障害者手帳はその名の通り、身体の機能に重大な障害のある状態にある場合に申請をすることができます。

 イメージとしては「車椅子」などの肢体不自由が思い浮かぶと思うのですが、実際には下記のようなものが対象にされます。

身体障害者手帳の対象

・視覚障害
・聴覚・平衡機能障害
・音声・言語・そしゃく障害
・肢体不自由(上肢不自由、下肢不自由、体幹機能障害、脳原生運動機能障害)
・心臓機能障害
・じん臓機能障害
・呼吸器障害
・ぼうこう・直腸機能障害
・小腸機能障害
・HIV免疫機能障害
・肝機能障害

 こちらはリンクの通り、厚生労働省よりの引用なのですが、実にこれだけの身体障害があります。

 非常に幅広いところで「身体障害」というものはあり、中には一見するだけではわからないものもあるでしょう。

 実際の身体障害者手帳には、障害の程度に応じて「等級」が決められており、厚生労働省の基準をもとに各自治体が等級を決めていくことになります。

厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」より

 ここで大切なのは上記のような状態になったとき、「自分はもしかしたら、身体障害者手帳の対象になっているかもしれない」と考えて、申請を考えてみても良いかもしれません。

療育手帳

 療育手帳は、知的障害を持っている人に対して交付される手帳です。

 名前の部分から少し結びつきが弱いかもしれませんが、知的障害を持っている人たちにとって関わりの深い手帳になることでしょう。ちなみに手帳の名前は、自治体ごとに異なる場合があります。

 療育手帳の目的として、知的障害を持つ人たちに対して一貫した指導・相談が行われるようにすることであり、より福祉サービスへつなげる意図がある制度と言えるでしょう。

 療育手帳は、「知的障害」によって交付されるものなのですが、重度の場合は「A」、その他の場合は「B」として判定されます。

 この療育手帳の区分に関しては、それぞれの自治体で独自の基準を設けており、そこそこで微妙に異なっています。

 ここでは日本における代表的な政令指定都市を3つほどご紹介させていただきます。

 東京都:愛の手帳(東京都療育手帳) 

 東京都では、発達期(18歳未満)に何らかの原因により知的機能の障害がおこり、そのために日常生活に相当な不自由を生じ、福祉的配慮を必要としている方に愛の手帳を交付しています。
 ※自閉症スペクトラム障害などの方で、知的障害を伴うと判定された場合には、愛の手帳が交付されます。(知的障害を伴わない場合は、愛の手帳の交付対象とはなりません。)

東京都:愛の手帳・交付の対象となる方より

 大阪府:療育手帳

知的障がいがあることを証明するものです。
障がいの程度は、3種類に分けられます。
大阪府の障がいの程度は、総合判定で

A   重度
B1  中度
B2  軽度

となっています。

大阪府:療育手帳についてより

 名古屋県:愛護手帳(名古屋・療育手帳)
 知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの援助を必要とする状態にある方に対し、療育手帳(名古屋市では愛護手帳といいます。)を交付しています。

 手帳の等級は、障害の程度により1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)の区分があります。

 詳しくは、下記の関連リンク(ウェルネットなごや「障害者福祉のしおり」)をご覧ください。

名古屋市:愛護手帳より

 これらはすべて療育手帳肉文される制度が記載されたページより引用されています。
 これを見るだけでも各自治体によってかなり違いがあることがわかるかと思われます。それぞれの自治体ごとに、微妙な違いがあるので、利用される方はお住まいの自治体へお問い合わせください。

精神障害者保健福祉手帳

 精神障害者保健福祉手帳(以下精神手帳)は精神障害を持っている人を対象としている手帳になります。

 精神手帳の対象は下記のようになっています。

精神障害者保健福祉手帳の対象

・統合失調症
・気分(感情)障害
・非定型精神病
・てんかん
・中毒精神病
・器質性精神病(高次脳機能障害を含む)
・発達障害
・その他の精神疾患

 難しい内容が書かれていますが、この対象で重要なのは、「対象となる精神疾患は意外に広い」ということです。

 統合失調症やうつ病などの病名は、少しずつ有名になってきていますが、実際に精神手帳の対象になるのはそれ以外にもたくさんあります。

 アルコール依存症や、発達障害などもこの精神手帳の方に入るので、「これで精神手帳の申請はできないかもしれない」と思うのは早計かもしれません。

 精神病院にかかるところがあれば、特に大きなところなら相談員がいる場合が多いので、自分の診断名で手帳が申請できるか確認して見ると良いでしょう。

 精神手帳は療育手帳と似た意味合いがあり、より福祉的な支援に結びつけるという側面があります。

 診断を受けた場合は、まずは手帳が申請できるかを確認をするべきでしょう。

障害者手帳を取得するには

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 ここまで障害者手帳についてお話させていただきましたが、手帳のことについて最も大きな問題があります。

 それが「申請はどのようにすればよいのか?」ということです。

 基本的に福祉は申請主義であり、「自分で申請をしてサービスを受けることができる」ということが大前提になります。

 具体的な流れは下記のような手順となります。

障害者手帳の申請の流れ

1.各自治体の「障害手帳」の申請に必要な書類等を確認する
2.主治医に意見書・診断書などをお願いする
3.各手帳に対応している機関にて判定を受ける

 これらの申請を行う際は、基本的に「申請者自身がしなくてはいけない」という難しい課題があります。

 更に前述した通り、これらの障害手帳は「自治体ごとに申請に関わる必要なものも異なる」ということが大きな問題になります。

 このため、障害手帳の申請をするにはハードルがとても高いと言えるでしょう。

 実際障害福祉サービスは、利用までのハードルが高い場面が多く、そのためにも我々のような福祉の専門家がいると言えるでしょう。

まとめ

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 今回は3種類の障害者手帳について解説させていただきました。内容が非常に広域なものであるため、煩雑さを回避するために簡単なものになっていますが、必要なことは「障害者手帳というものがあるということ」「場所場所によって違うが利用によって生活の補助を受けることができる」などのメリットがあります。

 障害を持ってしまうということは、その人だけの責任とは言えません。誰でも同じように、障害を持ってしまうリスクがあります。

 そんなときに助けになるものが障害者手帳です。活用できるサービスをしっかり活用するためには必要なものでありますので、これらのことをしっかりと活用していくことが大切だと感じています。

 このサイトでは、「障害福祉」に関する様々な情報を発信しています。身近な人で障害を持っている人がいる、障害を持ってしまったけれどどうしたら良いかわからない、人たちへ適切な支援につながる事ができるように、これからも適切なソースに従って記事を投稿を心がけています。
 良ければ他の記事もご覧いただけると幸いです。

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