【障害解説】精神障害とはどういう状態のことなの?どんなサービスが使える?精神障害について解説【現役専門職解説】

2024-02-23

 ※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。

 日本の障害には3種類あり、「身体障害」「知的障害」「精神障害」があります。

 その中で「精神病」によって日常的な部分で困りごとが生じている人のことを「精神障害」と呼びます。

 精神障害は「精神に不調がある」という、一般的に考えるとなかなかイメージのし辛いものであり、また世間での理解も十分とは言えません。

 精神障害はその障害の特徴からか、生活に苦労するばかりか社会的に孤立してしまうこともあり、生活のしづらさで言えば3つの障害のうち最も大きいと言えるかもしれません。

 また、精神障害はその障害特性上、最も誤解を与えやすい障害でもあります。このページでは、精神障害の概要とその特徴、利用できる障害福祉サービスについてご紹介させていただきます。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

精神障害者の定義について

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 まず精神障害者の定義から振り返りましょう。

 福祉の世界における精神障害者は、おもに「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」にて規定されている定義を参照しています。

 下記にて、厚生労働省より引用させていただきます。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)
(定義)
第五条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はそ
の依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

厚生労働省より:障害者の範囲〜「障害者(児)」の定義に関する規定の状況

 この定義では「統合失調症」が主とされていますが、下記のように「精神障害者保健福祉手帳」では、様々な精神障害を対象にしています。

 やや複雑ですが、「精神障害者」というのは福祉制度事に微妙に異なっています。

 一方で、これらをまとめて、一般的に「精神障害者」として考えられています。

精神障害の特徴と診断名について

 精神障害者についての定義は前述の通りなのですが、まとめると精神障害には下記のような診断名があります。

精神障害者手帳の対象障害分類

・統合失調症
・気分(感情)障害
・非定型精神病
・てんかん
・中毒性病
・器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
・発達障害
・その他の精神疾患

 これらの診断名はそれぞれ全く異なる特徴を持っており、加えて精神障害は、単純に診断された通りの病状が表れるわけではないことも多くあります。

 そのためこのページでは、それぞれの疾患名について概要とそれについてのまとめを記述するだけにとどめ、具体的なケースを交えたものは別の個別ページに任せることとします。

 ここでは、厚生労働省の「精神障害(精神疾患)の特性(代表例)」に記載されている、①統合失調症、②気分障害、③てんかん、④依存症、⑤高次脳機能障害、の5つの分類をメインに解説させていただきます。

・統合失調症

 統合失調症は代表的な症状として「幻覚」「妄想」などが生じる精神障害です。

 多くの場面で「精神障害」というと、この統合失調症が代表的なものと言われることがあるでしょう。

 代表的な病気ということもあり、発症原因はわかっていませんが、100人に1人弱かかると言われています。

 とはいえ、細かく症状を見ていくと、実は下記のようなものに分かれています。

統合失調症の基本症状

・幻覚や妄想などが活発になる陽性症状
・意欲低下や集中力欠如、セリフケアの困難さを伴う陰性症状
・考えがまとまりにくくなる認知や行動の障害

 これらの症状が引き起こされ、日常生活が困難になるケースが多くあります。

 一般的に統合失調症は「波」があり、陽性症状が活発に出るときと、陰性症状が活発に出るときを繰り返すことになります。

 このバランスを上手く取って生活することができることが地域生活で必要になります。

 これらの症状は多くの場合、統合失調症によって引き起こされる「病気」であり、正しく理解したうえで接する必要があります。

 まとめると下記のようになります。

統合失調症のまとめ

・発症原因は不明で100人に1人弱発症する
・幻覚を伴う陽性症状と意欲減退などの陰性症状を繰り返す
・脳の病気であることを理解して配慮した関わりを心がける

・気分障害

 気分障害は一般的には「うつ病」として知られているもので、気持ちや意欲が極端に減退する「うつ状態」と、逆に気持ちの高揚し体が過剰に動き続けてしまう「躁状態」に分けることができます。

 気分障害はこれらのバランスが崩れやすく、どちらかの状態に極端に振れてしまうことがあります。

 よく言われている「うつ病」という状態は、前述の「うつ状態」になっていることが多く、このときの意欲の低下は健常状態の人からは想像もつかないほどとされています。

 うつ状態としては下記のようなものが挙げられるそうです。

・悲しく憂鬱な気分が1日中続く
・これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
・食欲が減る、あるいはます
・眠れない、あるいは寝すぎる
・疲れやすく、何もやる気になれない
・自分に価値がないように見える
・集中力がなくなる、物事が決断できない
・死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う

厚生労働省・こころもメンテしよう

 これらが気持ちが下がっているうつ状態は上記のようなことが継続する状態になります。

 更に気分障害には、これとは逆に、過剰に気分が高揚してしまう「躁状態」というものもあります。

 この躁状態とうつ状態を繰り返すことを「双極性障害」、俗に言う躁うつ病になります。

 気分障害を患っている人たちは、このうつ状態や躁状態に強く苦しめられる場面が多くあり、病気のために出現するこれらの症状と上手く付き合っています。

 あくまでも病気であることを理解して接することが大切です。

 下記は気分障害についてのまとめとなります。

気分障害のまとめ

・気分障害はうつ病、躁うつ病のことを示している
・意欲の低下があるうつ状態、逆に気分が高揚しすぎてしまう躁状態がある
・相手の気持を尊重し、相手の言動や行動が病気に起因することが多いことを理解する

・てんかん

 てんかんは何らかの原因で、脳の一部が過剰に興奮することによって発作症状が起こるものです。

 このてんかんは脳神経の異常ともされており、基本的には専門家の指示のもとで服薬を継続することで一般的な生活を送ることができるとされています。

 てんかんの発作は、下記のように様々なタイプがあります。

てんかん発作の種類

・けいれんを伴うもの
・突然意識を失うもの
・意識はあるが認知の変化を伴うもの

 これらの発作は代表的なものとして挙げられているのですが、実際のてんかんは人によってかなり違ったものになります。

 そのため、その人の状態にあった継続的な通院や、適切な服薬をしていく必要があります。

 てんかんについては下記のようにまとめさせていただきます。

てんかんのまとめ

・てんかんは発作を伴う脳神経の異常であり、誰にも起こり得る
・てんかん発作は意識消失からけいれんなど色々なものがある
・適切な内服を続けることで日常生活を送ることができる

・依存症

 依存症は特定の物質や行動を繰り返さないと満足できない状態となり、自力で行動をコントロールすることができなくなる状態のことを示しています。

 依存症というと代表的なのはアルコールや薬物などが考えられるかもしれませんが、実際にはギャンブルや万引きなど、行動の面でも依存症に該当します。

 依存症は多くの場合に病識がなく、治療を必要とする病気であるということがなかなか理解されない傾向にあります。

 依存症、もしくはそれに近い状態の本人だけではなく、家族も支援に置いて重要になってくるので、依存症を患っている方への支援は多くの場合は根気強く継続的な支援が必要になる場面が多く見られます。

 依存症については下記のようにまとめさせていただきます。

依存症のまとめ

・依存症は特定の物質、行動を自分ではコントロールすることができなくなる状態
・病識がない場合が多く家族ぐるみでの支援が必要になるケースも多い
・再発のリスクが常に付きまとう

高次脳機能障害

 交通事故や脳血管障害などにより、直接脳にダメージが生じることで精神的に色々な障害が起こることを高次脳機能障害と呼びます。

 高次脳機能障害は、身体的な障害が残っていないことも多くあり、見た目ではわからないことから「見えない障害」と呼ばれることもあります。

 高次脳機能障害によって引き起こされる症状は非常に幅広く、下記のようなものがあります。

高次脳機能障害の種類について

・記憶障害
・注意障害
・遂行機能障害
・社会的行動障害
・病識欠如
・失語症
・片麻痺
・運動失調
・感覚障害

 高次脳機能障害は一言で言っても、かなり幅広いものがあります。

 ここでは一つ一つの細かな解説はせずに、概要の記述のみに留めますが、全てにおいて言えることとして、相手ができることに注目して、相手の自尊心を傷つけないように接することが大切です。

 例えば記憶障害が生じている場合は、相手がどれくらいの記憶力があるのかを焦点化し、「全く思い出せない」「手がかりがあれば思い出せる」など段階に分けて考えることが大切になります。

 相手の状態や人格を尊重し、その人にあった適切な支援を努めていくことがメインになるでしょう。

 高次脳機能障害について、下記のようにまとめさせていただきます。

高次脳機能障害のまとめ

・高次脳機能障害は脳にダメージが生じることで表れる精神的な障害が生じる
・現れる症状は様々で、記憶障害や注意障害など様々なものがある
・相手の状態や能力に合わせて支援をしていく
・精神障害を持っている人が利用できる福祉サービス

・精神障害者が使える制度について

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 最後に精神障害の方が利用できるサービスについて解説させていただきます。

 精神障害のある方が利用できるサービスは下記のようなものがあります。

精神障害者が使えるサービス

・障害福祉サービス
・障害年金
・精神保健福祉手帳

 これらのサービスについては個別で紹介させてもらっているページがありますので解説は簡単にさせていただきますが、大切なこととしてそれぞれ「生活の質」や「日々の生活の助けになる経済的な支援」を受けることができます。

 知的障害のページでもほぼ同様のことが書かれていますが、同じように課題となるのは申請についてでしょう。

 これらのサービスの使用には「各自治体ごとの申請」や「自分で利用申請をしなくてはいけない」など課題は多くあるのですが、それでも生活の質を大幅に向上させる事ができるため、使わないという選択肢はありません。

 使うことができる制度をしっかり利用して、高い生活の質を心がけましょう。

 とはいえ精神障害を持ってしまっていると、自力でそれらをすることはかなり難しく、また主な支援者となる家族も負担が多くなりがちです。

 そのためこれらの申請にかかる支援は、それぞれの地域の相談支援事業所に連絡して助けてもらうのが良いかもしれません。

 これらのサービスは内容が微妙に地域ごとで異なっているため、利用の際は必ずそれぞれの地域で確認をしてください。

まとめ

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 今回は精神障害を持った方々の概要と使えるサービスについて解説させていただきました。

本記事のまとめ

・精神障害者の定義は精神保健福祉法にて規定されている
・精神障害は精神疾患によって日常的に困難が生じている状態のことを示す
・精神障害には①統合失調症、②気分障害、③てんかん、④依存症、⑤高次脳機能障害、などに大別される
・精神障害を持っている人への支援は本人を理解する努力と根気強さが必要になる
・障害福祉サービスの対象となっている

 精神障害を持っている人たちは、その症状だけではなく本人のもともとの特性もあらわになるものです。

 独特な表現や認知の方法をされることがありますが、大切なのはやはり「相手のことを深く理解しようとする」ということだと思います。

 しっかりとした支援を受けて、状況を見極めていけば、地域で生活することは不可能ではありません。

 地域で使える資源を活用して、生活に役立てていただければ幸いです。

 今回のページにて参考にさせていただいた記事は下記になります。より深い理解をしていきたい方がいましたら、ご覧いただけると幸いです。

 厚生労働省・精神障害(精神疾患)の特性(代表例)

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