【障害解説】発達障害ってなにか?どんな種類・特徴があるの?使える福祉サービスを交えて解説【現役専門職解説】
※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
日本における障害の分類は、身体・知的・精神としてわけられることが多くあります。
しかしながら最近では、「発達障害」の知名度も上がってきており、学生の段階から名前を聞くことも多くなってきているのではないでしょうか。
発達障害は障害分野の中でも新しいものではありますが、その存在が知られていなかったときには、社会的に生きづらいがために二次障害的に精神障害を患ってしまった人もいるかもしれません。
発達障害は体の機能的な面でも問題があるわけではなく、知的な面でも特に問題がないとされることが多くあり、知的な面ではむしろ一般的な人よりも高い傾向にあります。
発達障害に現れる困難は多くの場合は「人間関係」であり、特に学生時代は人間関係のトラブルに苦しむことがあります。
人間関係に大変さがあることが多い発達障害ですが、その一方で発達障害は特定の分野で大きな功績を残す人が多いことでも知られています。
今回はそんな発達障害について解説させていただきたいと思います。
最後までご覧いただけると幸いです。
発達障害とは
発達障害は、厚生労働省より発達障害の項目から、下記のように引用させていただきます。
発達障害
脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上における機能障害が発達期にみられる状態をいう。最新のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)では、神経発達障害/神経発達症とも表記される。
厚生労働省・発達障害「e-ヘルスネット」
発達障害は比較的最近になってきて注目されてきたものであり、コミュニケーションにて大きな障壁が生じ、社会との軋轢が生まれてしまう状態のことを指しています。
発達障害が注目されてきたことにより、今まで「本人の怠慢」や「家族の問題」とされていたものが、明確に「病気」として捉えられるようになりました。
そのため、社会的に孤立していた発達障害を持つ人たちに、「社会的な支援が必要になるのではないか」と考えられるようになっていきました。
発達障害には「発達障害者支援法(2016年改正)」において、下記のように定義がなされているようです。
この定義では、下記の5つに分類わけがなされています。
・自閉スペクトラム症
・注意欠陥・多動性障害
・学習障害(限局性学習症・LD)
・発達性協調運動障害
・チック症
これらの発達障害はそれぞれ異なる性質があり、一つ一つ解説させていただきます。
今回はありふれているとされる、「自閉スペクトラム症」「注意欠陥・多動性障害」「学習障害」について解説させていただきます。
発達障害の種類
発達障害には前述の通り、いくつかの種類がありますが、共通しているのは「何かしらの原因により、発達上で障害が生じている」というものがあります。
すべての発達障害の原因は解明されていませんが、コミュニケーション能力や学習における偏りなど、一見すると「病気」としては考えられないものもあるかもしれません。
それ故、発達障害についての知識がないとどうしても「親の育て方が悪いのではないか」と考える人もいるかも知れませんが、それぞれの発達障害の特徴をしっかりと理解することで、発達障害の人と接する際に工夫することができるようになってくるかもしれません。
発達障害は、恐らく社会生活のなかで最も関わりが多くある障害種別かと思われます。
そのためにも、一つ一つの特徴をしっかりと理解し、お互いにとって有意義な関わりが大切になります。
自閉スペクトラム障害(ASD)
この「自閉スペクトラム症」は、過去ではアスペルガー症候群、広汎性発達障害という診断がなされていたのですが、2022年の「DSM-5-TR」にてこのように整理されました。
そのため、この記事ではそれらの名前は使わず、「自閉スペクトラム症」として統一させていただきます。
まず自閉スペクトラム症の概要ですが、LITALICO・ジュニア様のページにて直感的に理解できる文言がありましたので、引用させていただきます。
ASD(自閉スペクトラム症)とは
自閉スペクトラム症とは、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られる発達障害の一つです。
LITALICO・ジュニア ASD(自閉スペクトラム症)とは
自閉スペクトラム症は男女で発症率に大きな違いがあり、男性に多く見られ、女性の約2倍から4倍ほどの報告があるそうです。
上記より自閉スペクトラム症には下記のような特徴があります。
・コミュニケーション能力の難しさ
・特定のものに強くこだわる傾向にある
・感覚が過敏、もしくは鈍い傾向がある
これだけを見ると、これそのものが病気というより、人間社会で活かしにくい特性として考えることもできます。
そのため、障害として捉えるかどうかはその人それぞれで異なるところがあるのですが、もし仮に上記のような特徴によって生きづらさが生じているのであれば間違いなくそれは障害となります。
例えば、上記のような特徴のために下記のようなことが現れれば、対処の必要があります。
・自閉スペクトラム症の特性が理解されず、いじめや結果を認められないなどのことがある
・幼少期に親からの不理解によって不登校や、精神的な二次障害(自傷行為・摂食障害など)がある
・社会との不仲が原因で引きこもりや精神病を発症してしまう
このような状態になってしまうと、せっかくのその人が持っている個性を活かすことが難しくなってしまいます。
この自閉スペクトラム症というものは、しっかりとした理解を持って接することが本人にとっても、周囲の人にとっても関わりの上で大切になりますので、特徴を掴んで配慮した接し方が必要になります。
自閉スペクトラム症は知的障害と併発しているケースもあり、そのような場合は知的障害を考慮した接し方も必要になります。
・コミュニケーション能力の難しさがあり、配慮が必要になる
・社会との不適合により精神的な負担が大き生じる阿相がある
・相手のこだわりを考慮した関わりや役割、接し方が必要
・子どもに同じような特徴があった場合は心理検査などで客観視すると理解しやすい
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害は、「不注意」と「多動・衝動性」を特徴する発達障害の一つであり、有病率は学童期の小児の3%から7%程度とされています。
特に小児期における関わりでは、その後の人格形成などにも大きな影響があるので、しっかりとした理解が必要になるとされています。(厚生労働省より)
名前にもなっている通り、ADHDは「不注意」と「多動・衝動性」の2つの種類と特徴があり、それぞれがどのような強さで症状として現れるかは人それぞれになります。
作業が不正確であり、なくしものが多いなど多くの場面で注意が散漫な状態のこと
体を常に動かし、自分の行動を優先してしまい順番やルールなどを待つことができない状態のこと
ADHDは「不注意優勢型」と「多動・衝動優勢型」、もしくは「混合型」の3つのパターンに分類されるとされ、どの部分が強く現れるかで特徴が異なります。
・不注意優勢型:不注意が強く現れ、ケアレスミスが多く特定のことに集中することができない、もしくは自分の好きなことに没頭してしまい周囲をおろそかにする事がある
・多動-衝動優勢型:じっとしていることができずに無意識に体を動かしてしまう。気持ちのコントロールができず、集団生活で落ち着きのない行動をしてしまう
・混合型:両者の特徴が混在していて、どちらの傾向も大きく現れる
このようにADHDにはいくつのか種類は傾向があります。
どちらにしても大切なのは、早期にこれを発見して、適切な関わりをしていくことです。
ADHDもまた、知的障害と併発しているケースもあるので、気になる所があれば都度、病院や児童相談所など、然るべき機関を頼ってもよいでしょう。
・ADHDは不注意と多動・衝動性という2つの考え方がある
・注意が散漫でミスが多く、衝動的な行動が見られる
・社会との不適合により精神的な負担が大きいことがある
・小児期の発症ではその後の人格形成に大きな影響がある
学習障害(LD)
学習障害とは、限局性学習障害とも呼ばれ、知的な面での発達に遅れがないものの、読み書きや計算など、特定の部分のみ学習が難しくなることを示します。
学習障害には下記の種類があります。
・読字障害(文字を読むことができず、文章の意味を理解することが難しい)
・書字障害(バランスの取れた文字を書くことができない・考えを書いて表現することが難しい)
・算数障害(数の概念を理解することが難しい。計算の習得の難しさ)
学習障害は「知的に問題がないのに、読み書きや計算ができない」という、世間的なイメージからすると理解の難しい特徴があるゆえ、どうしても「育ての問題ではないか」と考えてしまうケースがあります。
しかしながら、文字や数字などを認識する場所はそれぞれ異なっており、部分的に能力が違っていることは何もおかしな話ではありません。
また、知的の面で問題がないということは、本人の精神的な負担も考慮する必要があります。
「ある程度は理解できるのに部分的にできない」ということは、本人の成功体験や自尊心に影響する可能性があります。
これを自覚するのは多くの場合は学校に通う学童期が多くなるかと思われます。
そのため、他の発達障害も同じように配慮あるコミュニケーションが必要になります。
また、部分的に学習することが難しくても、継続した訓練や代替手段によって、現在では障害というほどでもない日常生活を過ごすことができている方も多くいます。
・読み書きや計算など部分的に学習の困難さがある
・知的能力と読み書きや計算などが別の概念であることを理解することが大切
・本人の自尊心や成功体験を損なうような関わりを避ける
・一つ一つ丁寧な学習や代替手段を考える
発達障害を持つ人の特徴
今回は発達障害として、「自閉スペクトラム症」「注意欠陥・多動性障害」「学習障害」について解説させていただきましたが、それぞれ見ていると全く異なる特徴を持っていると言えます。
確かに発達障害は、共通している部分もありますが、我々が日常的に暮らす中で無意識で行っていることを、なかなか意識してできないということが挙げられるかもしれません。
・自閉スペクトラム症→必要なコミュニケーションの習得
・ADHD→社会的なルールの習得・自己コントロール能力
・学習障害→読み書きや計算などの習得
これらの能力は、我々が無意識に行っているがゆえ、「それができて当たり前」という認識を持っているかもしれません。
しかしこれらは、非常に複雑な脳機能になって成立していることで、部分的にこれらが意識的にできなくても、不自然なことではないことを理解しましょう。
自分にできないことがあれば、人にできないこともあるということは社会生活を行っていればどうしても出てくるかと思われます。
発達障害は、それが「多くの人が理解できない部分」であるということです。
これらを部分的な障害として取るか、それとも人間の能力のばらつきと考えるかは難しいところです。
しかしながら、これらを十分に理解することで、発達障害がない人たちにとっても円滑なコミュニケーションができるかと思われます。
利用できる福祉サービス
最後に、発達障害の方が利用できる福祉サービスについていくつかご紹介させていただきます。
とはいっても、実は発達障害は「精神障害」として分類されることが多く、その診断が受けるためには「心療内科」や「精神科」などの診断を受ける必要があります。
そのため、共通している年金や障害福祉サービスも場面によって受けることができます。
それに加えて、発達障害はそれまで障害として認められてこなかった背景があります。そのため、「自分が発達障害とわからないまま社会生活で苦労する」ということが多くあり、特に仕事の面では苦労することが多くあるとされています。
そのためここでは雇用に関連するものも挙げさせていただきます。
・障害福祉サービス(就労移行支援などの就労系)
・障害年金
・障害者手帳
・障害者雇用枠での就職
障害者雇用枠での就職は、ハローワークなど代表的な相談機関がある程度有名なので、もし自分が発達障害なのではないかと感じたときは、そのような場所で相談を受けても良いかもしれません。
よりその可能性が高まった場合は、一度診断を受けてみるということは重要です。
まとめ
今回は発達障害についてまとめさせていただきました。
本記事のまとめは下記のようにになります。
・発達障害には自閉スペクトラム症・注意欠陥多動性障害・学習障害などの種類があり、知的障害と併発している場合もある
・種類によってできることや出来ないことがはっきりと分かれており、その人が苦手としていることへの配慮が必要
・知的能力に問題がない場合でも、部分的に学習能力が変わる可能性がある
・精神障害に分類される場合があり、障害サービスも精神障害を基準として受けることができる可能性がある
発達障害は最近になってある程度認知されたものであり、それまで「どういうわけかコミュニケーションが難しかった」という人たちが実は発達障害だったというケースも多々見られるようになりました。
そのため、発達障害という言葉が急速に浸透していき、現在では多くの人に認知されるようになっていきました。
しかしその一方で、まだまだ発達障害の世間的な理解は高いとは言えないかもしれません。まだまだ誤解されることが多くある世の中、少しでも幅広い人に正しい知識が浸透することを祈っています。
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