【障害福祉】障害を持った人は働けるのか?障害者雇用や福祉的就労の違いは?障害を持った人の「働く」を解説【現役専門職解説】
※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
障害を持っている人は「働くことが難しい」と考える人は多くいるかもしれません。
実際に障害を持っている当事者の人たちも、「こんな状態じゃ自分は働けない」と考えることが多くあるかもしれません。
しかしその一方で、日本では障害者向けの雇用に関する色々なサービスや制度があります。今回は障害者向けの雇用、障害福祉サービスについて解説させていただきます。
最後までご覧いただければ幸いです。
重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。
障害者が働くことはできる?
最初に、「障害を持ってしまっても働くことができるのか?」という疑問から、お答えさせていただきます。
これは「働くことができる」と断言できます。
ただし、基本的には健常者が働く場合も同じで、「環境があっていれば、問題なく働くことができる」という意味合いが近いと言えるでしょう。
一方で、「障害を持っていることで出てくる不和は解消していく必要がある」ことは間違いなく、周囲の環境の配慮は絶対になってくると言えるでしょう。
そのための方法として、下記のようなものが考えられます。
・障害者雇用を利用する
・福祉的就労を利用する
・症状が安定している時に一般雇用をする(非推奨)
仕事については現在、日本では色々なものがあるので、大きくわけて上記のようなことが考えられます。
上記には一応列挙させていただいていますが、「症状が安定している時に一般雇用をする」ということは、この記事では明確に非推奨とさせていただいています。
というのも、特に精神障害や発達障害の方が多いのですが、「障害をクローズ(隠したまま)のまま就職する」というケースが度々ありますが、大抵良いことになりません。
そのため、この記事では「障害者雇用」と「福祉的就労」の2つを解説させていただきます。
障害者雇用制度
障害者雇用制度とは、地域で生活している障害のある人たちが、福祉や医療、雇用など各分野に支援を受けながら働く事ができるように、企業や自治体が障害のある方を雇用する制度のことです。
障害のある人の雇用は、一般的なイメージや障害の特性から「難しい」とされていましたが、「障害者の雇用促進等に関する法律(以下:障害者雇用促進法)」により定められています。
あまり知られていないのですが、障害者雇用に関しては、実は下記のような制度で、障害のある人たちの雇用の機会や権利を守るように整備がなされています。
- 障害者雇用率制度(法定雇用率とも)
企業・国・地方公共団体に雇用されている障害者の割合が一定以上で雇用するように義務付けられている。
- 障害者差別解消法による合理的配慮の提供義務
雇用される障害のある人への「合理的配慮」の提供義務化が定められている。
- 障害者雇用促進法
雇用の際に障害の有無で機会や待遇に不当な差別を行ってはいけないと定められている。
現在は、少しずつ理解が進んでいるとはいえ、障害のある人たちが障害者雇用をしていくことは難しい場面があるかもしれません。
しかしそのようなときには、上記のように制度が十分整備されていることを把握し、しっかりとした主張をしていくことが必要な場面もあります。
障害者雇用と一般雇用の違い
障害者雇用と言っても、「障害のある人が一般雇用で働く」というケースもあるかと思われます。
実は障害者雇用と一般就労は明確に違っていて、具体的には下記のような違いがあります。
・障害者手帳の有無にかかわらず応募することができる
・障害のある人の雇用は前提としておらず、配慮や理解に欠ける場合がある
・選べる職種や求人数が多く、就職活動の際に幅広い選択肢を持つことができる
・障害者手帳を持っている人が応募することができる
・障害のある人の雇用を前提としており、障害に対しての配慮・理解を得ることがしやすい
・選べる職種や求人数が一般雇用と比べると少なく、選択肢が狭い場合がある
具体的な違いは上記のようになり、当然ながら「一般雇用」のほうが障害に対しての理解や知識不足により配慮を欠くケースが多くなります。
とはいえどちらも一長一短であり、「配慮の可能性が低く、選択肢の多い一般雇用」か「配慮の可能性が高く、選択肢の少ない障害者雇用」かどちらを選ぶべきは人や障害状況により異なるでしょう。
あくまでもこれは、それぞれの状況次第なところがあります。
ただし当然ながら、障害に対して配慮のある方が働きやすく、定着もしやすいと言えるでしょう。
訓練をしていき最終的には一般雇用を目指すということも良いですし、障害の配慮をしっかりしてもらったうえで働くというのも良いでしょう。
どれを選んでいくかは、その人の目的や展望によって異なります。
それこそ、後述する福祉的就労の中では、一般雇用を目指す「就労移行支援」などもあり、それらを活用する選択もできます。
福祉的就労
福祉的就労とは、色々な定義があるかもしれませんがこの記事では、障害福祉サービスにある「就労継続支援」と「就労移行・定着支援」のふたつがあります。
下記にて障害福祉サービスについて解説させていただいており、そちらでも解説しているのですが、今回はざっくりと下のようにイメージしていただければと思います。
・就労継続支援:福祉的な就労環境で実際に働くこと。
・就労移行(定着)支援:一般企業などへの障害者雇用などの就職に向けて準備し、就職後のサポートを受けること。
どれも名前がかなり似ているので、混乱してしまうかもしれませんが、これらはすべて全く異なっています。
どのような働き方を選ぶかは人それぞれ、障害の状態それぞれですが、最終的には自分の目標や展望に合わせて、これらを活用していく運びとなるでしょう。
下記より、一つ一つ解説させていただきます。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、雇用を福祉的な就労環境で、雇用契約に基づき働くことができる障害福祉サービスです。
対象者は下記のとおりとなります。
① 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者※平成30年4月から、65歳以上の者も要件を満たせば利用可能。
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス:就労継続A型
上記は厚生労働省よりの引用ですが、就労継続支援をはじめ障害福祉サービスは自治体ごとに微妙に詳細が異なるものなので、利用を考える場合は必ずお住まいの自治体に確認しましょう。
就労継続支援A型の特徴として、「福祉的な環境でありながら一般就労に近い環境で働くことができる」という点です。
雇用契約を行ったうえで仕事をするということから、最低賃金で働く事となり、福祉的な環境も整っていることから、一般雇用よりも日数や勤務時間の調整を考えてくれる事業所も多くあるでしょう。
ただし、福祉的な環境が整っているとはいえ、雇用を結ぶことや最低賃金を保証するなどの部分から、実際の仕事の内容は雇用を結ばないB型と比べるとハードルが高いことがあり、それ相応の安定性を求められます。
また、B型にも同じことが言えますが、それぞれの事業所で特色としている作業の内容や、傾向が全く違います。いくら福祉的な環境とはいえ、その人や障害特性にとって向き不向きがあることは事実ですので、しっかりとした事業所の確認は必要になります。
まとめると下記のようになります。
・就労継続支援A型とは、障害福祉サービスの一つであり、福祉的な環境で雇用契約を結んで就労することができる。
・福祉的就労の中でも最低賃金を保証するなど、工賃水準は高い。
・事業所ごとに特色があり、行っている作業内容も異なる。
・雇用契約に基づくため、一般企業に近いレベルの能力が求められる場合がある。
・就労継続支援B型
就労継続支援B型とは、雇用契約を結ぶA型とは異なり、雇用契約を結ばずに福祉的な環境で就労することができるサービスです。
こちらも下記のような人たちを対象としています。
① 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス:就労継続B型
② 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
③ ①及び②に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者
こちらもA型同様に、各自治体によって微妙に内容が異なるので、利用を考える場合は必ず問い合わせをすることが大切です。
就労継続支援B型は、A型と比べると雇用契約を結ばないため、比較的幅広い障害の程度で働くことができます。
その分、工賃はA型よりも低くなりますが、自由性や福祉的な環境の強さという面ではB型はA型より勝ると言えるでしょう。
当然ながら、就労継続支援という括りとなり、あくまでも「働く場」としての意識が高いため、ある程度の水準の能力性が求められますが、障害に対しての配慮も充実しているので、一般企業の障害者雇用を目指してその一途として利用される人もいます。
こちらもA型と同様、行っている作業や、得意としている障害種別は場所場所で異なっていますので、それぞれに状態や将来を考えて利用先を考えることが大切です。
まとめると下記のようになります。
・就労継続支援B型とは、障害福祉サービスの一つであり、福祉的な環境で雇用契約を結ばずに働くことができる。
・雇用契約に基づかず、福祉的な支援の傾向が強いが、工賃などはA型よりも下がる。
・得意としている障害種別や作業内容などが異なるため、自分にあった場所を見つける必要がある。
就労移行支援
就労移行支援は、継続支援とは異なり福祉的な環境で働くことができるものではなく、障害のある人たちが一般企業での雇用を目指してトレーニング・訓練する事ができるサービスです。
こちらは目的がはっきりしており、「最終的には企業に就労する」という目的があって利用するものです。
そのため、就労移行支援には期限があり、原則2年間利用することができますが、それとは別に必要性があると認められた場合は最大で1年間の更新をすることができます。
とはいえはっきりと期限が設けられているため、ある程度の展望や目的意識が必要になります。
トレーニングやサポートの内容としては、就職活動の準備、職場体験、求人の確認や履歴書の作成などの就職活動全般などのサポートなど、雇用に関する多方面からの相談に対応しています。
特に職場体験は、実際の仕事の内容から、障害特性を鑑みた支援を受けることができる場合もあり、「落ち着いた職場環境の理解」や「生活リズムの安定性」など、自己理解につなげてセルフケアを安定させる働きもあります。
はっきりとした目的がある場合は就労移行支援の利用がおすすめです。
まとめると下記のようになります。
・就労移行支援は、一般企業への雇用を目的に原則2年間の利用ができる。
・就職に関する様々な相談や支援を受けることができる。
・企業への雇用という目的がはっきりしており自身の展望に合わせた支援を受けることができる。
就労定着支援
就労定着支援は、移行支援を中心に一般就労へ移行した障害のある人への、生活面や就業面での問題を解決するためのサービスです。
就労移行支援のその後をサポートするというイメージが最も近く、就労後の生活面を中心に支援をするほか、就労機関や医療機関などと情報共有し、円滑な支援体制を作るものになります。
これは障害の有無にかかわらないですが、就職をした後は精神的にも大きな負担になります。そのため、しっかりと状況を確認し、然るべき機関と調整をする定着支援はとても重要なものになります。
就労定着支援は、一般就労後6ヶ月を経過した人を対象としており、利用期間は3年間となります。
こちらは移行支援とは異なり、延長する事ができないもので、経過後は必要に応じて障害者就業・生活支援センターなどへ引き継ぐことになります。
まとめると下記のようになります。
・就労定着支援は、就労後の生活面を安定させるためのサービス。
・対象者の通う医療機関や職場などへの連絡調整を行う。
・利用の最長は3年で状況に応じて障害者就業・生活支援センターなどに引き継ぐ。
まとめ
今回は障害者雇用と福祉的就労のふたつから、障害のある人が働く方法について解説させていただきました。
まとめると下記のようになります。
- 障害のある人でも、障害者雇用や福祉的就労など、方法はたくさんある
- 障害者雇用はしっかりとした制度で保障されたものであり、障害のある人が働くことを前提にしている
- 福祉的就労には、福祉的な環境で働くことができる就労継続支援がある
- 福祉サービスの中には、一般雇用を目指す就労移行支援や、その後の定着のための就労定着支援がある
- 福祉サービスの利用の際は各自治体へ申請が必要になる
障害を持ってしまうと働けなくなってしまう、という考えのある人はおおいにいるかも知れませんし、実際現在の二本で積極的に働いていくということは難しいかもしれません。
しかし、日本にはそれらを補助するために色々なサービスや体制が整備されているのも事実です。
これらを利用して、自分の人生をより良くしていくため、来になった方はぜひとも活用してみてはいかがでしょうか。
このサイトでは、「障害福祉」に関する様々な情報を発信しています。身近な人で障害を持っている人がいる、障害を持ってしまったけれどどうしたら良いかわからない、人たちへ適切な支援につながる事ができるように、これからも適切なソースに従って記事を投稿を心がけています。
良ければ他の記事もご覧いただけると幸いです。
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