【精神障害】統合失調症とはどんな症状がある?どんな経過をたどる?統合失調症について【現役専門職解説】

 ※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。

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 その中でも、今なお誤解が多い障害である「精神障害」の代表は、統合失調症です。

 最近ではフィクションなどの創作にも取り上げられるようになり、少しずつその知名度と性質が知られつつありますが、だからこそ実際とは異なる形で伝わってしまっているケースもあります。

 今回はそんな「統合失調症」をテーマに、解説させていただきたいと思います。この記事は精神的な不調があり受診を悩んでいる人や、気持ちが落ち込んで精神的に参ってしまっている人にこそ、ご覧いただきたい内容となっていますので、ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。

 この記事では統合失調症の症状について解説させていただきます。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

統合失調症とは?

MoondanceによるPixabayからの画像

 統合失調症の概要については、厚生労働省より下記のようにまとめさせていただきます。

 心や考えなどがまとまりを欠いた状態なる病気です。そのため行動や気分、人間関係などに様々な影響が出ます。100人に1人くらいがかかるといわれていて、それほど珍しい病気ではありません。早めに治療するほど症状が重くなりにくいといわれているので、早期発見と早期治療が大切です。

厚生労働省:こころの病気について知る ストレスとこころ こころもメンテしよう「統合失調症」

 こちらは当該ページより引用させていただいておりますが、別のページである「統合失調症ナビ」様では症状についてより細かな記載がされており、そちらも参考にさせていただき、症状を下記のようにわけて解説させていただきます。

  • 幻覚や妄想などの「陽性症状」
  • 意欲低下や集中力の欠如などの「陰性症状」
  • 考えがまとまらず周囲との関わりが難しくなる「認知・行動障害」

 上記より、統合失調症をまとめると下記のようになります。

・原因は不明で100人に1人ほどの割合で発生する。
・症状は「幻覚」や「妄想」が特徴であり、そのような症状を「陽性症状」と呼ぶ。
・それ以外にも意欲の低下や集中力の欠如、自己管理ができなくなるなどの「陰性症状」もある。
・考えがまとまらず周囲との関わりが困難になる。

 これらを踏まえて、一つ一つの症状を見てみましょう。

陽性症状

 陽性症状は「幻覚」や「妄想」などの、実際にはそこにないものに対して、本当にそこにあるような感覚がしてしまう症状の総称です。

 大きくわけて「幻覚」と「妄想」に分かれていますが、実際には「そこにないものを感覚として感じるようになる」ことや、「現実ではありえないようなことを本当の事実のように思い込んでしまう」ということが挙げられます。

 一つ一つ項目に分けて見ていきましょう。

幻覚

Daniel HannahによるPixabayからの画像

 幻覚は現実にないものをあるように感じてしまうことです。

 一口に幻覚といっても、当然それは人が感じている「五感」の分だけあり、それぞれ下記のように対応しています。

  • 視覚 → 幻視
  • 聴覚 → 幻聴
  • 嗅覚 → 幻嗅
  • 味覚 → 幻味
  • 触覚 → 幻触

 統合失調症における幻覚は、上記すべてのことをまとめて呼称しています。

 これらのどれが表れるのか、またどれが強く感じられるかは人によってかなり異なります。

 大切なのは、これらはあくまでも「実際には起きていない」ことなのですが、統合失調症を持っている方々すると「現実に起きていること」と同じように捉えることです。

 幻覚は確かに、当事者以外の人から見れば、不自然な発言かもしれませんが、それはもしかすると、統合失調症から来る幻覚である場合もあるのです。

 相手にとっては現実として起こっているものとして理解することが理解への第一歩となります。

 これは当事者にとっても同じことで、「幻覚という症状が現れる可能性がある」という考え方ができると、冷静に物事を捉えることができるかもしれません。

 もっとも、実際に症状が活性化している場合はそのような捉えが難しくなるので、服薬調整などで症状を緩和させることが一般的です。 

 とはいえ一つの考え方として、このような知識を得ておくことは大切です。

妄想

Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 妄想は前述の「現実ではありえないようなことを本当の事実のように思い込んでしまう」というもので、多種多様で色々な種類があります。下記では代表的なものを紹介させていただきます。

  • 誇大妄想:自分の能力や社会的地位が極端に大きなものだという思い込み
  • 関係妄想:周囲のちょっとした言動や行動が、自分に向いているものだと思い込む。人だけではなくあらゆるものにそう感じる。
  • 被害妄想:周囲の人が自分の悪口を言っていると思い込む。
  • 思考奪取妄想:自分の考えが相手に読み取られているのではないかと思い込む。
  • 思考吹入妄想:相手の考えが頭の中に入ってくるように思い込む。

 ここに挙げたものはあくまでも一例であり、全てにおいてこれに当てはまるわけではありません。

 しかし妄想の一つの特徴として、「通常の人生経験からは生まれないような信じられないもの」である傾向が強いというものです。

 話しによっては聞くに耐えないような妄想もあるでしょう。けれども妄想が生じているとき、当事者にとってその妄想は確信状態であるため、多くの場合訂正が難しくなります。

 この状態のときは冷静に俯瞰的な考えを持つことが難しくなるため、他者からの声がけには応じない場合がほとんどです。

 幻覚と同様に、主治医に相談することが望ましいとされています。

それ以外の陽性症状

 代表的な陽性症状は「幻覚」と「妄想」なのですが、それ以外にも症状が活発になるものもあります。

 それが下記のようなものになります。

  • 自我の障害:誰かに支配されていると感じるようになる。
  • 思考の障害:考えが上手くまとめることができず、話している内容がバラバラになる。
  • 行動の異常:強い興奮や奇妙な行動を取り、同じ言葉や行為を繰り返す。

 これらの、活発に正常ではないことが起こっている状態をまとめて「陽性症状」とされています。

 実際には、これらは複雑に絡み合って表現化されることがほとんどであり、どれか一つだけ症状として現れることは少ないかもしれません。

 それをしっかりと見極めて相手と接することが大切になります。

陰性症状

Ulrike MaiによるPixabayからの画像

 陰性症状は陽性症状とは真逆で、「本来であれば活発に動いているものが動かなくなる」というイメージで、陽性症状と比べると「明らかに病気だ」という状態ではなく、むしろ今までの社会では「個人の問題」や「やる気」などと誤解されていたような症状になります。

 具体的には下記のようなものがあります。

  • 感情鈍麻:気持ちの表現が乏しくなり、感情表現ができなくなる。
  • 意欲減退:仕事や家事などのやらなくてはいけないことだけではなく、好きなことや身だしなみなど、自分に対しても意欲がわかずに無頓着になる。
  • 集中力の低下:特定のことを集中して行うことができなくなり、疲れやすくなる。
  • コミュニケーションへの支障:人との関わりが極端に減り、社会性が乏しくなる。

 上記の内容は、一般的には「うつっぽい」という表現がされます。

 統合失調症でも同様にこれらの症状はあり、この状態になってしまっているとそもそもの関わりが乏しくなってしまいます。

 一方でこれらの症状は、どうしても「怠け」だったり、「努力不足」として捉えてしまわれがちな傾向があります。

 そうではなく、これらは「陰性症状」という症状の一つなのだとしっかりとした理解を社会全体でしていく必要があります。

 そもそも陰性症状が強い状態では、しなくてはいけない努力そのものができなくなるので、しっかりとした治療や休息や必要になります。

認知・行動障害

Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 統合失調症の代表的な症状は前述のふたつです。陽性症状と陰性症状はそれぞれ態度や接し方に現れるのですが、実はそれに現れず、支援者にもなかなか理解してもらえない認知面での障害も統合失調症には見られます。

 認知機能は、人が本来持っている知的な能力のこと全般を示しており、「記憶力」や「情報処理能力」、「計画性」などがこれに当たります。

 認知・行動障害とはその基本的な知的部分に障害があり、病気を持つ前と同じように生活することができなくなることがあります。

 これらは当人たちも正確に説明することが難しくなる場合があり、支援者の感覚で接してしまうと見逃してしまう大事なポイントになります。

 症状としては下記のようなものがあります。

  • 記憶力の低下:新しい物事を覚えることが難しく、何をしようとしていたかわからなくなり、会話が入ってこない事がある。
  • 注意力の低下:多くの刺激の中で特定のものだけを選ぶことが難しくなり集中力が散漫になる。
  • 比較照合能力の低下:2つ以上の情報の比較が適切にできなくなる。
  • 実行機能の低下:計画を立てて効率的に手順を考えることが難しくなる。
  • 統合能力の低下:情報をグループごとに整理する事ができず、整理整頓や料理などができなくなる。

 認知・行動障害は、特に病気から復帰した後の回復に影響が出る場合があります。

 また、どの認知機能が低下しているのかは自分で把握するのは難しいため、しっかりとしたリハビリや訓練が必要になる場合があります。

統合失調症の4つの経過

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 統合失調症には、症状の進行に合わせて4つの段階があります。

 下記の画像は「国立国際医療研究センター病院様」よりの引用であり、多くの場合はこのような期間と症状に関係があるとされています。

画像引用:国立国際医療研究センター様・統合失調症とは?

 この4つの期間は、それぞれの期間で現れる症状に特徴があるとされ、下記のようにまとめられます。

  • 前兆期:不眠や不安、神経過敏などの身体症状
  • 急性期:陽性症状と陰性症状(陽性症状が強くなるケースが多い)
  • 回復期:陽性症状が少しずつ低下し陰性症状が残る
  • 安定期(慢性期):治療により安定した生活が送ることができるも、陰性症状が残る事がある

 おおむね上記の表のカーブに習うとされており、このような経過で発症・回復することが多いようです。

 ただしあくまでもこれらは統計的なデータなので、すべての人に当てはまるわけではないことは留意しましょう。

まとめ

Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 今回は精神障害の代表例である「統合失調症」について解説させていただきました。
 まとめると下記のようになります。

統合失調症のまとめ

統合失調症はおよそ100人に1人が発症する可能性のある比較的身近な病気
統合失調症は「陽性症状」と「陰性症状」、「認知・行動障害」の3つが主にある
「陽性症状」は本来ないはずのないものを感じるようになるもので、幻覚や妄想などがある
「陰性症状」はあるはずのものがなくなるもので、意欲の低下等がある
「認知・行動障害」は認知能力の低下であり、注意力が散漫になるなど記憶力の低下などがある
統合失調症には「前兆期」「急性期」「回復期」「安定期」という流れで進行の段階がある

 統合失調症は、多くのところで見られるようになり、注目度も高くなっていると言えます。

 しかし多くの場所で見られるようになると、それだけ誤解されるところも多くなり、「幻覚や妄想」などの要素だけ過剰なイメージが先行する場合があります。

 当然、統合失調症の人と接する場合は、しっかりと症状を理解して、相手に配慮した考え方をしていくことが求められます。
 今回の記事で「統合失調症」について少しでも参考になれば幸いです。

 今回の記事で参考にさせていただいたページについては、下記にて記載させていただきますので、ぜひそちらもご覧いただければと思います。

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