【依存症】なにかに「依存している」とはどういう状態のことか?依存症について【現役専門職が解説】

 精神障害の代表的なものは「統合失調症」や「うつ病」などですが、それらふたつは少しずつ社会的な認知も広がっていて、配慮される機会が増えてきています。

 統合失調症やうつ病に関しては、下記にてまとめた記事がありますので、そちらをご覧ください。

 しかし精神障害にはまだまだ色々な種類があります。その中でも「依存症」という分野は、まだまだ社会的な認知レベルが低いと言えるかもしれません。

 依存症はいまだ、「病気ではなく本人の努力で変えられる」と思われている場面もあるでしょう。それこそ、薬物などの依存症と、買い物などの依存症とでは明らかにその認識が違っています。

 これらはすべて「依存症」としてまとめられているのですが、これに対して正確に理解されている方というのは少ないのではないでしょうか。

 また周りの人だけではなく、「衝動的に依存的な行動をしてしまい止めることができず困っている」という人もいるかも知れません。そんな人はもしかすると、依存症という努力では改善の難しい状態になっているかもしれません。

 今回はそんな「依存症」についてまとめさせていただきます。

 最後までご覧いただけると幸いです。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

依存症とは

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 まず依存症とはどのような状態のことを指しているのでしょうか?

 下記は厚生労働省より出されている依存症についての情報誌からの引用です。

 アルコールやギャンブルなどの特定の物質や行為を「やめたくても、やめられない」状態を、「依存症」と言います。習慣的に依存物質の接種や依存行為を繰り返していくうちに進行していく病気です。自分や家族の健全な社会生活に悪影響を及ぼす可能性があります。

厚生労働省・依存症って?-依存症を「正しく知って」「支える」ために-

 上記の引用の内容が非常に簡潔ですが、上記の状態すべてのことを「依存症」とすることではありません。

 大切なのは、「依存症によって生活に障害や困難が生じていること」であり、アルコールやギャンブルをすることが全て悪いということではありません。

 勿論これらのことは、良いとされていない事かもしれません。しかし依存症の中には「買い物」や「恋人との関係」などもあり、一概にすべて悪いと表現してしまうと、今度は生活の質を下げてしまうこともあります。

 そのため、あらゆることが「依存」してしまう可能性があり、そのバランスを正常に保つことが依存症を防止することが大切になります。

依存症の特徴

Ulrike MaiによるPixabayからの画像

 概要を踏まえて、依存症には下記のような特徴があるといえます。

  • 特定のなにかや物質(アルコールや薬物)、行動などに過剰に執着する
  • 依存対象に対してコントロールや自制することができなくなる
  • 依存対象によって生活に困難が生じてしまっても、それを止めることができない
  • 依存対象は物質だけではなく、色々なものが依存となりうる

 このなかで大切なのは、「コントロールできない」ということと「健康被害や社会生活が困難になる」ということです。

 これらは明白に「困っていること」になります。極論言えば、人間は色々なものに依存をして生きているわけですが、その中でも特定のものに対して強く依存してしまい、それ以外のことが考えられなくなる状態が「依存している、精神障害となってしまっている」という状態になります。

 この状態になってしまうと、個人の努力での改善は非常に難しい、もしくは不可能になってしまっている場面もあります。

 また、依存症は客観的な指標で「依存症とそうでない状態」というものが判断しづらく、その判断である診断を受けるということも、まだまだハードルが高いと言えます。

 そのため、自分の依存状況がうまく把握できず、医療機関に受診するときには重篤になってしまっていることもあります。

 依存症を考えるときには、個人もそうですが、その周りの人たちがどのように捉えているかということも大切になります。

 まとめると下記のようになります。

依存症の特徴のまとめ

・依存する対象は色々なものがある。
・依存対象によって生活に障害が生じている場合は治療の対象になる場合がある。
・医療機関の受診をするときには依存症は重たくなっている場合がある。
・個人で悩まず、周囲の人からの声がけや配慮も大切

依存対象

Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 依存症とは言っても、「何に対して依存しているのか?」ということはとても大切です。

 代表的な依存である「アルコール」や「薬物」などは、物質依存というようにものに対して強い依存性が現れることになります。

 依存対象には非常に様々なものがあり、具体的には下記のように分類分けができるとされます。

物質依存

 物質性の依存は最もポピュラーなものであり、特定の物質を飲む、注射して接種するもの全般を指し示します。

 具体定期には下記のようなものが挙げられます。

  • アルコール(酒)
  • タバコ
  • 薬物(違法薬物など)
  • 処方箋や睡眠薬などの薬品

 これらは心理的な依存もさることながら、人体への影響も非常に大きく、アルコールは急性アルコール中毒などの死の可能性があることもあり、早期の治療や介入が望ましいものとなります。

 薬物などに関しても同様であり、継続的に服用することで人体への被害が起こることもあります。

 重要なこととしてこれらの物質は、「心理的」ではなく「機能的」に依存性を強めてしまうことです。これらは強烈な依存性を持っており、バランスよく付き合っていくことが難しい場面があります。

 これらは努力でなんとかできるものでは明確にないので、困っている場合は医療機関の受診が必要になります。

プロセス依存

Thorsten FrenzelによるPixabayからの画像

 プロセス依存とは、特定の行為自体に強い執着心を持ち、依存してしまう状態のことです。

 大抵そのような行動には、強い興奮や刺激、快楽がある場合があり、そのような非日常的な感覚を求めて繰り返し行ってしまう状態を示します。

 具体的には下記のようなものがあります。

  • パチンコや競馬などのギャンブル行為
  • 不要なものまで購入してしまう買い物
  • 窃盗などの反社会的な行動
  • ネットサーフィンやゲーム

快楽を求めて性交渉や浮気(関係ではなく性行為そのものや浮気という行動)

 これらの行為は、そのどれもが日常的に感じにくい強い刺激が共通しています。

 性交渉なんかは文字通り快楽的な行動ですし、ギャンブル行為は「結果がどうなるかわからない」というランダム性があるために依存的な傾向を強めると言われます。

 これら行為全般に関する依存を「プロセス依存」として呼んでおり、最近ではゲームやネットなどがプロセス依存として話されるケースも増えています。

 これらも物質依存と同様に努力だけでの解消は困難になる場合が多くあります。また、これらの多くは「日常的な行動」も含まれているため、早期発見が難しいケースも多々あります。

 これらが依存症的としてみなされるときには「仕事に支障をきたすようになる」や「家庭をかえりみることがなくなる」などがきっかけになる事が多く、その状態になれば、既に依存性はかなり強いと言えるでしょう。

 こちらもお困りの際は医療機関の受診の必要があるでしょう。

関係依存

Ri ButovによるPixabayからの画像

 関係依存は他のものとは異なり、「対人」に対して働く依存です。

 特定の人や人間関係に強く固執し、その人以外との人間関係を絶ってしまう、もしくは極端に求めてしまう場合などがこれに当たります。

  • 女性、男性依存
  • 家庭内暴力(家族・恋人)
  • ストーカー的な行動

 人間関係への極端な歪みは、他の依存性とは異なり「自分以外の人」もいるため、関係は変わりやすく、介入が難しい場面が多くあります。

 加えて、これらの状態になっている当事者たちは、自分が依存的な傾向にあるとは思っていないため、自発的に困難を感じるケースも少ないと言えるでしょう。

 そのため、周囲の人達が介入するパターンや、関係のズレや離れる機会などに介入するケースが多くあります。

 他の依存性とは異なる場面が多く、介入が難しいケースになります。

依存症の経過

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 依存症は、「依存物質に対してうまくコントロールができなくなる」状態のことであるため、基本的に個人の努力で止めることは難しいと言えます。

 しかしながら、依存症の第一歩として「依存対象から距離を置く」ということが大切です。

 これを継続していくことで、依存物質から少しずつ離れていき、依存症から回復する事ができるようになります。

 こちらも完全に治るということを表現することは難しいかもしれませんが、回復することはできます。

 とはいえ、依存症はその性質上、長年依存対象から距離を取っていても、「一度でも依存対象が近くなってしまうともとに戻ってしまう」ということがあります。

 そのため、できる限り依存対象から距離を取り続けるということが大切になるのですが、ここで大切なのは、「他の依存対象を見つけてしまう」ということがないように配慮しなくてはいけません。

 依存対象から逃れるために、他の依存対象を見つけてしまうということは多々あることであり、そうなってしまうと本末転倒です。

 大切なのは、上手に依存先を増やすことかもしれません。色々なものにまんべんなく依存先を作ることで、特定のものに対して過剰に依存することなく、安定した生活ができるようにすることこそが、真の依存症の治療になるのかもしれません。

依存症の人との関わり方

Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 依存症の人との関わりは、およそ本人よりも依存対象への依存性に関わる可能性があります。

 何より、依存症のある人に対して「叱責」や「注意」をどうしてもしてしまいがちなのですが、それらをしてしまうと「反発して更に依存してしまう」ということになりかねません。

 依存症の方々との関わりで大切なのは下記のようなものが挙げられるかもしれません。

依存症の人との関わり方について

・努力で治るものではなくしっかりと治療が必要であることを伝える
・依存対象から距離を置くように促し、依存対象が近くにない状態を作る
・再発の危険性を考え、依存対象へ近づけるようなことをしない
・依存症の人の家族に対して、話を聞くなどの支援をする
・依存症の人の精神的な負担を受け止め、受容的な態度を取る

 これらのことを意識しながら、基本的には「依存対象のない環境へ整える」ということをメインに考えると良いかもしれません。

 とはいえ、むやみやたらと依存対象から距離を置くことは精神的な負担を増加させ、「別な依存対象を作る」や「余計に依存してしまう」など悪化させるケースもあります。

 それについてバランスよく付き合っていくことは非常に難しいため、積極的な医療機関の受診や相談は大切です。

 依存症を好転させるために必要なのは、多くの人の目を入れて依存対象から距離を取ることです。

 そのためにも、しっかりと依存症について理解することが大切になります。

 またこれらを理解しておくことで、自身が依存症にならないように予防する事もできるかもしれません。

まとめ

Mohamed HassanによるPixabayからの画像

 今回は精神障害の一つである「依存症」について解説させていただきました。
 まとめると下記のようになります。

この記事のまとめ

・依存症は特定の物質や行動、プロセスをやめることができない状態になってしまうことで、それによって日常生活が困難になった時に障害となる。
・依存症はアルコールやタバコなどの物質的なものだけではなく、万引きやネットなどのプロセスや行動に対して依存してしまうこともある
・自分の意志でコントロールすることが難しく繰り返してしまうことがある
・依存症は一人で抱え込むと悪化や再発のリスクが高くなり、家族を始めとする周りの人の協力が必要

 依存症は人体に対して悪影響になることや、反社会的な行為によって社会的に大きな烙印を押されてしまうことがあります。

 また、依存症は「薬物」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはいろいろなものがあり、それをしっかりと理解する必要があります。
 特にこれらを理解する必要があるのは、当事者たちよりもむしろそれを支援する家族や友人が深く理解していることが大切です。

 依存症を始めとして、精神障害はまだわからないことが多くあり、正しい情報を学ぶことが大切になります。
 このサイトだけではなく、依存症で悩んでいる人たちは少しでも正しい情報を学び、孤立することのないようにしていくことこそ、依存症の解決の第一歩となるかもしれません。 

この記事の参考ページ

・厚生労働省 「依存症についてもっと知りたい方へ」
・大石クリニック 「依存症の種類と分野」
・依存症対策全国センター 「依存症の基本」

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