【家族支援】支援を必要としている人がいる家族、ケアラーとは? 潜む健康リスクや支援について【現役専門職が解説】
※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
福祉の現場では、様々な障害や生活の困難さのある人たちが多くいます。障害を持っている当事者の皆さんは何かしらの生活のしづらさ、社会参加の難しさを抱えて生活されています。
しかしながら、そんな障害を持つ当事者以外にも、大変な思いをされている人たちがいます。
それが、障害を持つ当事者の家族です。障害を持っている当事者の方々は勿論、自分の生活をしていくために大変な思いをしていますが、同時にそれを支えている家族のみなさんも、大変な生活を強いられています。
言い換えるなら、「障害を持つ家族がいる」ということであり、そこには障害特性から来る大変さとはまた異なる大変さがあるかもしれません。
障害を持っている当事者の方へメインの支援者となっているケースもあり、その大変さ、辛さはその家族にしかわからないと言えるでしょう。
今回はそんな、障害を持っている人の家族の大変さをテーマに記事を書かせていただきます。
最後までご覧いただければ幸いです。
「家族に障害を持つ」ことの大変さとは
このサイトでは、「障害福祉」をテーマに色々な障害のことを記事にしてきましたが、当然そのような障害を持っている人たちにも家族がいます。
その障害特性によって異なりますが、大抵の場合同居する家族は、障害を持っている人たちへの支援を日常的に行っています。
それがある程度日常的になっている場合も多くあるのですが、「家族が支援者になる」というケースは、実に多くの健康リスクが潜んでいるといえます。
具体的には下記のようなことがあるでしょう。
- 日常的に支援を行うため家族個人の時間を取ることが難しい
- 支援そのものの肉体的、精神的な負担が大きい
- 家族外からの支援を受けることが難しく、社会的に孤立しやすい
- 障害特性によっては安定した人間関係を築くことが難しい
- 家族特有の関係性の難しさ
上記の例はあくまでもほんの一例であり、これ以外にも様々な悩み事、苦しいことがあるかもしれません。
このように、同居している家族が障害を持っている家族を無償で支援することを、福祉的な言い方で「ケアラー」と呼びます。またその中でも、18歳未満のケアラーを「ヤングケアラー」としています。
ケアラーは一般的な「支援者」とは、下記のような部分で異なっています。
・障害を持っている人と家族や友人など、プライベートで親密な関係がある
・無償で支援を行い、仕事などの関係ではない
・障害はもちろん、高齢者の介護などもケアラーに含まれる
・学校や仕事など、ケアとは別に仕事がある
これらはケアラーの話をするうえで非常に大切な話であり、ケアラーはこれらの要素を基本的に持っていると言えます。
大切なのは、家族にケアが必要な人がいるということは、上記のようにケアそのもの以外にも、自分の生活や仕事や学業など、複数の負担を抱えることになるということです。
ケアラーが支援する人たち
ケアラーが支援を行うのは、障害を持っている人や介護が必要な人たちです。
具体的には下記のようなものが考えられます。
・親が身体障害を持っており、車椅子の移動や段差の移動などに介助が必要
・子どもが知的障害を持っており、生活におけるあらゆる面で支援が必要
・引きこもりによって何年も自宅から出ることができない家族がいる
・精神障害によって自傷行為やアルコールの大量飲酒などの危険性が常に付きまとう家族がいる
・親、もしくはパートナーが認知症であり、日常的に介助が必要
当然上記の内容についても、例の一つであり、細かく考えればもっと様々な例があるかもしれません。
ケアラーの難しいところは、上記の例全てにおいて「経験する大変さが全く異なる」ということでしょう。
例えば身体障害のケアをする場合は、「日常生活で介助が必要になる」ため、必然的に肉体的な負担が多くなります。それに加えて、例えば「定時で排泄をしなくてはいけない」なども重なれば、自分の時間を取る事ができず、精神的な負担にもつながるでしょう。
これが精神障害のケアとなればまた話は別であり、アルコール依存症の人が家族にいて、アルコールを摂取して人が変わったように暴れるなどの特性が生じてしまうとします。
そうなってしまえばその家庭での安全な生活はかなり難しくなるでしょう。
こうなってしまえば家族離散の危機にすら成り得ます。
このように、ケアラーは支援をする対象によって全く異なる課題が生じるといえます。
ケアラーの人たちが抱えるリスク
前述の項目にて、ケアラーの人たちが抱えるリスクについて挙げていますが、より細かく確認していくと、ケアラーの人たちと実際に支援を受ける人たちとの明確な違いが見えるようになってきます。
- ケアラーは当事者ではないため「障害福祉サービス」などの対象にならない
- 生活保護を受給する際に、同世帯であれば働き手とみなされて申請ができない場合がある
- 障害を持つ当事者や、認知症の当事者の監督責任を追求される場合がある
- 過剰に支援が必要な家族に依存してしまい共依存関係になってしまう
- もしくはその逆で関係が壊れてしまう可能性がある
上記の特徴として、「ケアラーとして責任が伴う」ということと、「関係が険悪、もしくは依存的になる」という2つのリスクがあります。
ケアラーとしての責任が伴うのは、「家族なんだから世話をして然るべき」などの前世代的な考え方や、これまで常識とされていたところからどうしても「家族の責任」として取られてしまう、社会に問題があるかもしれません。
そのような事があれば、更に関係性のリスクが高くなると言えるでしょう。家族の責任であるとして考えてしまえば、社会的に孤立してしまって、問題が家族の中だけで回ってしまうことも少なくありません。
これらのリスクは、最終的には下記のようなことにつながってしまう可能性があります。
・家族のみが支援者となり、支援が必要な人に適切な支援が行き届かない
・ケアラーが精神的な負担が強くなり精神障害を負ってしまう
・適切な支援を受けられず、金銭的に困窮してしまう
・主たるケアラーの死後、支援が必要な人が孤立してしまう
・家族関係に亀裂が生じて関係が壊れてしまう可能性がある
これらの危険性は、どれも人間が生活するうえで明確に危機的なことです。
これらを避けるためにも、ケアラーの存在にいち早く社会が察知し、手を差し伸べていけるような社会を作ることが現在求められています。
ケアラーへの支援とリスク回避について
ケアラーが非常に大きなリスクを抱えていることはこれまでの話の通りですが、それでは実際にどのようなことが支援として考えられるのでしょうか?
具体的に考えていきましょう。
・当事者団体や家族会など、障害者や認知症のケアラーとしての悩みを共有できる場に参加する
・障害福祉サービスの利用について検討し、現状を相談してみる
・家族だけの問題として捉えず、積極的に社会参加を試みる
・障害福祉サービスなど、適切な利用を行い息抜きのタイミングを作る
ケアラーの場合は「障害者」や「認知症」など、支援をする対象は幅広いものの、どれも「障害福祉サービス」や「介護保険制度」など、利用できる福祉制度はとても多くあります。
これらの利用は、「支援が必要な人たちへ適切な支援を届ける」だけでなく、「ケアラーのリラックス」にも繋がる可能性があります。
特に「支援によってできた自分の時間を取る」ということは、実は想像以上に大きなリラックス作用があります。
更に、「家族だけで抱えなくてもいいんだ」という感情から、支援が必要な人のケアを社会全体で考えるという意識が生まれやすくなるのもメリットと言えるでしょう。
このように、ケアラーへの支援は、「適切な支援を届けること」と「家族と外部のつながりを作る」ことが大きな柱になることでしょう。
障害者の当事者団体や活動団体については、下記で記事にしているので、是非参考にしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は支援を必要としている人たちとその家族について、ケアラーという視点から記事を書かせていただきました。
まとめると下記のようになります。
・障害を持つ人や認知症を抱える人たちへ無償の支援を行うことをケアラーと呼ぶ
・家族や友人などのケアラーは、社会的に孤立する可能性があり、健康面で大きなリスクがある
・ケアラーにはリスクの他に、責任を負わなくてはいけない可能性がある
・リスクを回避するためには、適切にサービスを利用する必要がある
・社会的な孤立を防ぎ、積極的な社会参加が大切
ケアラーの支援はまだまだ潤沢であるとは言えないかもしれません。
障害や認知症など、ケアを必要としている人たちへの支援は、本来社会全体で行っていくことが大切です。
とはいえ、現在の社会はそこまで手が届く環境ではないと言えるでしょう。本当に支援が必要な人たちへ積極的に手を伸ばす行動を、福祉的な言い方で「アウトリーチ」と呼びますが、現状福祉はアウトリーチまで円滑に行き届いているとは言えません。
だからこそ、情報化した社会でこのような情報が積極的に認知されることを願っています。
ここまでご覧いただき本当にありがとうございました。
このサイトでは、「障害福祉」に関する様々な情報を発信しています。身近な人で障害を持っている人がいる、障害を持ってしまったけれどどうしたら良いかわからない、人たちへ適切な支援につながる事ができるように、これからも適切なソースに従って記事を投稿を心がけています。
良ければ他の記事もご覧いただけると幸いです。
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