【ヤングケアラー】家族の支援をするのは普通のこと?支援者となる子どもたち【現役専門職が解説】

 ※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。

 家族や知人といった、親しい間柄のなかで支援を行っている人たちのことを、「ケアラー」と呼びます。

 支援が必要な人というと、「障害を持っている」や「高齢になって認知症を発症する」など、いろいろなパターンが考えられるでしょう。

 そんなケアラーの方々は、精神的・肉体的な負担を強く感じるケースが多くあり、健康面でのリスクが高いと言えます。

 ケアラーと呼ばれるような人たちはどんな人がいるでしょうか。その多くは「大人」をイメージするかもしれませんが、実際には子どものときからケアラーとして、家族のケアをしている人もいるかも知れません。
 ※ケアラーについては下記の記事を御覧ください。

 18歳未満で、何かしらのケアをしているケアラーを、福祉的な言い方で「ヤングケアラー」と呼びます。

 ヤングケアラーの問題は、近年問題視されるようになってきており、児童福祉の分野でも、支援が必要なものとして見られることも多くなってきました。

 今回はそんな「ヤングケアラー」についての記事となります。
 最後までご覧いただければ幸いです。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

ヤングケアラーとは?

 ヤングケアラーは比較的最近呼ばれるようになってきた言葉であり、「こども家庭庁」では明確にどのようなことであるかの記載がなされています。

 ヤングケアラーとは? 

 「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがあります。

こども家庭庁より「ヤングケアラーについて

 上記の通り、ヤングケアラーは「支援」を必要としているような人たちの世話を行っている人たちのことを示しています。

 ここでは「支援が必要な人」として表現していますが、それは必ずしも障害や高齢化等による介助だけではなく、「本来大人が担うと想定されること」を行うことそのものがヤングケアラーに当たります。

 実際、こども家庭庁より出されている資料からは、具体的に下記のようなものが「ヤングケアラーに該当している」ようです。

出典:こども家庭庁より「ヤングケアラーについて」(参照 2024/5/12)

 ヤングケアラーについては、こども家庭庁の中で平成30年から実際に調査が行われるなど、多くの場面で注目され始めていることですが、様々な理由からその認知レベルは未だ多くはありません。

 認知レベルが高くないということは、それだけ支援の手が潤沢ではないことを表しています。

 一方で、近年では福祉の分野だけではなく教育や医療など、複数の専門分野がまたがってプロジェクトを作るなど、活発な運動が見られています。

ヤングケアラーの問題

Ulrike MaiによるPixabayからの画像

 ヤングケアラーをしていると、具体的に下記のようなことを日常的にしているとされているようです。


  • ほぼ毎日のように誰かの世話や支援をしている
  • 自分ひとりの時間や勉強などに時間を使うことができない
  • 他者との関わりを断ってまでケアを優先してしまう
  • 他者との関わりが乏しくなり、結果として孤独を感じてしまう

 わかりやすく表現しているため、個別的なケースではありませんが、当然ながらこれらはすべて大きなリスクになります。

 ヤングケアラーは大人のケアラーとは異なり、「成長段階である子どもがケアに時間を費やしている」ということです。

 ヤングケアラーの支援の中には、障害や高齢者の支援以外にも下記のようなものが入っています。

ヤングケアラー

・親が障害を持っているため、他の兄弟の支援をしている
・本来教育を受けるはずの親の補助や支援をしている
・家計を支えるために、学業の時間を削って労働する

 これらの部分は明確に、大人のケアラーとは異なっており、「家計や家族を維持するために行動している」ということが特徴になります。

 当然これらの役目は大人のものであり、子どもが本業としているのは「大人になるための成長」です。

 勿論これらの経験が、大人になるための大切な道筋になる可能性はありますが、限度を超えてしまうと、大きな健康リスクや課題に直面してしまう可能性があります。

 子ども家庭庁でのホームページでは、「ヤングケアラーが直面する問題」として、下記の3つを挙げています。

出典:こども家庭庁より「ヤングケアラーについて」(参照 2024/5/12)

 これらの問題は当然として、そもそもヤングケアラーには下記のような問題点やリスクがある可能性があります。

・ヤングケアラーの危機の可能性

・本来の子どもが大人になるために必要な発達を養育者から受けることができない可能性
・学校や友人関係などの家族以外の関係が希薄になり、対人スキルが十分に育たない可能性
・間違った知識やスキルなどによって、自分のことを客観的に捉えることが難しくなる可能性

 これらはこども家庭庁での「ヤングケアラーが直面する問題」に最終的につながっていくことなるでしょう。

 ケアをしている人が子どもであるということは、我々が思う以上に子どもたちの発達に大きな影響を及ぼす可能性があります。

ヤングケアラーは周囲の気づきが大切

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 ヤングケアラーの問題については前述のとおりですが、この問題は「当事者たちが問題意識を持ちづらい」というところにあるかと思われます。

 どういうことかというと、「ヤングケアラー自身が、自分がしていることに当然だと思ってしまっている」ということです。

 具体的な例は下記のようなものになります。

ヤングケアラーの危険性

・家族の支援が日常的になってしまっており、生活リズムの一つとして定着している
・親からの教育により支援が当然であり、必ずやらなくてはいけないと思いこんでいる
・家族関係が濃密、もしくは外部との関わりが乏しいため、共依存的な関係になりやすい
・そもそも家族のことを他者に対して知られたくない

 問題はこれらだけに留まらないかもしれませんが、ヤングケアラーのなかでこのようなことが常態化していることは非常に高いと言えます。

 また上記の特徴をみてもらうと分かる通り、「当事者たちが問題意識を感じることが難しい」ということがわかります。

 本人たちは当然のこととして、実はケアをしてもらっている家族たちも「今までしてくれていたのだからそれが当たり前」と感じているパターンも考えられます。

 このように、問題意識を持つことそのものが難しいということから、ヤングケアラーは周囲の人たちがその存在に気づき、「それは大変じゃないか?」という問題提起をする必要があるのではないでしょうか?

 具体的には、下記のような立場の人たちは、ヤングケアラーの可能性を考慮して行動する必要があるかもしれません。


  • 学校などの教育機関で頻繁に子どもとの関わりがある人
  • 福祉などの相談機関や障害支援施設の職員で、障害のある人の家族と接する機会がある人
  • 医療機関などで継続した治療を行っている人の家族と接する機会がある人
  • 地域福祉などで、地域の人との関わりや事業を行っている人

 筆者は福祉分野の人間であるため、今回は福祉の分野の割合が多く取り上げています。

 しかしながら、ヤングケアラーの可能性の考慮というものは、子どもと接するほとんどの人に必要な視点になることは間違いないでしょう。

ヤングケアラーの支援と発見

congerdesignによるPixabayからの画像

 ヤングケアラーは上述の通り、「適切な支援へつなげる」ということが必要になってきます。

 ヤングケアラーへの支援というより、「その家庭へ適切な支援を行う」という、家族支援的な考え方が必要かもしれません。

 実際の支援力としては下記のようなものがあるでしょう。

ヤングケアラーの最初の窓口

・ヤングケアラーが相談できる相談窓口(電話・SNS・オンラインなど)
・学校の先生やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー
・家族が利用している福祉や医療機関の相談員など

 最初の窓口としてはこれらのようなところがあります。

 しかしながら、前述の通りヤングケアラーは、当人たちが問題意識を感じづらいというところから、より積極的に周囲の人々が「この子はヤングケアラーの可能性がある」と感じることが必要です。

 発見をして、その家族に対して適切な支援の手が届けば、ヤングケアラーの問題は少しずつ良い方向に回る可能性があります。逆に言えばそれまで可視化されづらいところがヤングケアラー問題の難しいところになるでしょう。

 それではヤングケアラーであることに気がつくためには、どのようなことが必要になるのでしょうか?

 こども家庭庁からの気付きの視点について、まとめてみましょう。

ヤングケアラーかもしれない子どもたち

・身なりや学校で使う道具が汚れている(親の支援を受けることができない・兄弟のケアをしているため)
・遅刻や欠席が多く、授業中に眠ってしまう、もしくは常に眠そうな表情をしている(ケア時間のため睡眠時間を取れていない・世帯を支えるために働いている)
・保護者の記入が必要な書類や、保護者が事前準備しなくてはいけない行事などの参加率が乏しい(親の支援を受けづらい)

 上記はカッコ書きの部分が「原因」であり、項目で区切っているところが「結果」となります。

 カッコ書きの原因があるからこそ、上記のような特徴が現れる可能性があります。

 これらの特徴を持つ子どものなかで、実際にケアが必要な人たちは、もしかしたらほんの一握りかもしれません。

 ですが、それらをすくい上げるのは、支援者として大切な視点になるでしょう。

まとめ

 今回はヤングケアラーについてまとめさせていただきました。
 まとめると下記のようになります。

ヤングケアラーについて

・ヤングケアラーは、本来大人が担う役割を子どもが果たしている状態のこと
・ヤングケアラーは子どもの正常な発達を阻む可能性があり、精神的な負担や健康上のリスクにつながる可能性がある
・ヤングケアラーやその家族は当事者たちが問題意識を持つことが少なく、周囲の人が気づくことが大切になる
・家族全体への支援が必要なケースも多い

 ヤングケアラーについては、まだまだ最近話されるようになってきたものであるため、発見の難しさはあるかもしれません。

 しかしその反面、子どもたちの貴重な時間がケアという、本来大人が担うべきところに使われているのは、社会としてもっと重く感じるべき問題なのかもしれません。

 今回は「こども家庭庁」からの出典が多く、そこでも正しい情報が伝わることを願う旨の話が多くありました。

 この記事だけでなく、多くのページを御覧いただき、ご覧になられた方々が少しでも「ヤングケアラー」についての問題意識を感じていただければ幸いです。

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