【障害解説】身体障害とはどんなもの?使えるサービスや制度は何がある?身体障害について解説【現役専門職解説】

 障害には、身体・知的・精神の3種類があります。

 そのなかでも身体障害は、その名の通り身体的な障害のことを示しており、一般的な「障害者」のイメージに最も近いものがあるかもしれません。

 近年では、車椅子の方にも対応したバリアフリー化が目覚ましく、バスや駅など、公共的な施設や公共機関に関しては、ほとんどが車椅子に対応した街並みになって来ています。

 しかしながら、身体障害は車椅子というイメージがあるかもしれませんが、実際には「身体」における色々な障害状態のことを身体障害としています。

 この記事では、身体障害について解説させていただきます。

 最後まで御覧いただけると幸いです。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

身体障害とは

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 身体障害の定義は、「身体障害者福祉法」にて規定されているものから引用し、更にその中の「別表に定められている障害の種類」からまとめさせていただきます。

(身体障害者)
第四条 この法律において、「身体障害者」とは、別表(※)に掲げる身体上の障害がある十
八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

厚生労働省・「障害者(児)」の定義に関する規定の状況

 身体障害者の定義は上記となるのですが、別表にて掲げられている身体上の障害とは、下記のようなものとなります。

身体障害の種類

・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害
・肢体不自由
・内部障害

 身体障害は上記のように、身体に関する全ての機能障害のことを示しています。

 そのため、外見からは判断できないものでも、身体障害を持っている可能性があります。

 現在では、ヘルプカードという、「自身が障害を持っていること」を示すものもある程度浸透しており、内部障害への認知度も上がってきていることから、配慮や支援も受けやすくなっていると言えます。

 また身体障害は、客観的に見て最も理解を得やすいと言えるかもしれません。

 知的障害や精神障害が客観的に見て「分かりづらい障害」に対して、身体障害は支援のイメージもしやすく、社会的にも知られています。

 そういう意味では、障害の中でも支援の受けやすいというものがあるかもしれません。

身体障害の種類

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 それでは各身体障害について解説させていただきます。

 この記事では、各障害のそれぞれの概要から、それらの障害を持った人たちがどのような特徴を持っているかをまとめさせていただきます。

視覚障害

 視覚障害はその名の通り、目の見え方に強い障害がある場合のことを示しています。

 視覚障害は「目の視力」を一つの基準にしており、例外としてコンタクトレンズや眼鏡使用によって日常生活を送ることができている場合はこの限りではありません。

 それらを利用していてかつ、下記のような条件を満たす場合に視覚障害として認められます。

 〜視覚障害〜
・両眼の視力(万国 式試視力表によって 測ったものをいい、 屈折異常のある者 については、きょう正視力について測っ たものをいう。以下 同じ。)の和が0.01 以下のもの(視覚障害1級より)
・両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの(視覚障害2級より)
・両眼の視野がそれぞれ10度以内で かつ両眼による視野 について視能率による損失率が90パー セント以上のもの(視覚障害3級より)

厚生労働省・身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

 これらのものから、視覚障害は「視力そのものが失われている状態」や、「視野の一部が欠けている状態」のことを示しています。

 視覚障害を持っている人たちは、白い杖や点字パネルなどの利用をすることで日常生活を送る人たちも多くいます。

 視覚障害はその特徴から、視覚的なアプローチが難しいことになり、それ以外の聴覚や触感へのアプローチがメインとなります。

 特に一緒に行動する場合は、「進行方向についてはっきりと伝える」ことはもちろんのこと、「動きを補助する」なども大切になっていきます。

 視覚障害は「目が見えない」ということも重要ですが、「いつ視覚障害を持ったか」というところも大切です。

 先天的な視覚障害の場合は、「視覚的な情報がない」という理由で言葉でのイメージがし辛いケースがあります。そのため、伝える言葉も選ぶ必要があります。

 一方で後天的な視覚障害の場合、「精神的なダメージへも配慮する」必要があります。いわゆる中途障害という状態になるのですが、この場合は「見えていたものが見えなくなる」という非常に辛い精神的な状態となります。

 このように、場面ごとの配慮が必要になってくると言えるでしょう。

聴覚または平衡機能の障害

 聴覚障害は、音が聞こえない、もしくは聞き取りにくい状態にあることを指します。

 音の聞こえ方は、耳(外耳・内耳)や脳などの幅広い機関に関係があり、それらの機能不全によって、音が聞き取りづらかったり、あるいは一切聞こえなくなってしまうことがあります。

 これに付随して平衡機能障害とは、めまいや耳鳴り等による症状から、立ち上がって安定した動作をすることが難しい状態のことを指しています。

 この2つはどちらも「耳」に関連する器官による異常であり、原因は様々なものが考えられます。

 具体的な等級表では下記のように書かれています。

・両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)2級基準
・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語
理解し得ないもの) 3級基準
・平衡機能の極めて著しい障害(平衡機能障害) 3級と5級基準

厚生労働省・身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

 耳が聞こえないということから、やはり聴覚以外へのアプローチでのコミュニケーションが一般的であり、筆談や手話などコミュニケーションツールも最近では一般的になりつつあります。

 こちらも中途障害として、後天的に障害を持ってしまうケースも有り得るので、相手の精神面への配慮も必要になる場合があります。

・音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害

 音声機能とは広く言えば「口」に関する障害のことを言っており、言語障害はろうあ、失語症などのことを指しています。

 音声機能やそしゃく機能は、口や喉などが何らかの理由で「話すことが難しい状態」や「ものを食べることが難しい状態」になっていることで、以下のものが考えられます。

音声機能・言語機能を消失する可能性

・口蓋裂や口唇裂(唇の形が裂けている)
・がんなどによって喉頭を無くしている
・発声する筋肉が麻痺している

 なかなかイメージがし辛いものが多いかもしれませんが、このようなものによって発声や咀嚼能力に影響をする場面が見られます。

 具体的な等級表では下記のように書かれています。

 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害

・音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失(3級)
・音声機能、言語機能又はそしゃく機能の著しい障がい(4級)
・肢体不自由

厚生労働省・身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

肢体不自由

 肢体不自由はその名の通り、手足や体幹などに何かしらの原因で障害が残ってしまい、動かすことができない、もしくは補助が必要になる状態のことをいいます。

 肢体不自由は最も一般的なイメージがなされる身体障害であるかもしれません。

 車椅子の利用や杖などによる歩行などがこれに該当し、バリアフリーなどによって、暮らしやすい配慮がなされるようになりました。

 肢体不自由の具体的な等級表では、下記のように書かれています。

  肢体不自由

・両下肢の機能を全廃したもの(1級)
・両上肢の機能の著しい障害(2級)
・体幹の機能障害により歩行が困難なもの(3級)

厚生労働省・身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

 肢体不自由の等級表では、「上肢」「下肢」「体幹」の3つに分かれていて、それぞれで細かく等級わけがなされています。

内部障害

 内部障害とは、体の内部に障害がある状態のことを言っており、身体障害者福祉法にて定められた下記の7つの障害のことを示しています。

 内部障害

・心臓機能障害(1級・3級・4級)
・じん臓機能障害(1級・3級・4級)
・呼吸機能障害(1級・3級・4級)
・ぼうこう又は直腸の機能障害(1級・3級・4級)
・小腸機能障害(1級・3級・4級)
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(1級・2級・3級・4級)
・肝臓機能障害1級・2級・3級・4級)

厚生労働省・身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

 意外かもしれませんが上記のような、「体の内部的な障害」として認められているものは、障害に分類され障害福祉サービスの対象になったり、障害福祉手帳の対象になることもあります。

 この内部障害の障害の等級は、それぞれの障害によってどの程度日常生活に制限があるのかによって等級が判断されています。

 上記のカッコ書きの部分は、対象となりうる等級のことを示しています。

身体障害を持つ人の特徴

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 身体障害の主な対象については上述したとおりとなります。

 身体障害者が他の知的・精神と大きく異なる部分として、「身体的な機能が障害されている」というものがあります。

 知的障害と精神障害はどちらも「機能」の面で体が動かないということがありません(もちろん併発するケースもあります)。

 そのため、「自分の体が動かないことへの配慮」というものは特に重要になってきます。

 視覚障害の部分でも触れているのですが、身体障害は「先天的」か「後天的」かによって、当事者が受ける感覚がかなり異なるとされています。

 当然これは筆者が触れている中での感覚的部分もあるのですが、「後天的」に身体の障害が生じた場合は、「それまでできたことができなくなる」という気持ちの負担がかなり強く現れます。

 身体障害に合わせて、バリアフリー化やコミュニケーションの配慮は当然として、それに合わせて「相手の気持の配慮」というものは他の障害と同様に気をつけなければいけないことであるかもしれません。

 まとめると下記のようなものになります。

身体障害を持つ人の特徴

・身体障害を持っている人はそれぞれの困りごとに合わせた支援をする必要がある
・身体障害を持つ時期やタイミングによって心の負担が増加する場合がある
・後天的に障害を持った人には「それまでできたことができなくなる」という精神的な負担に配慮する
・身体障害を持つ人が使えるサービス

身体障害者の人が使えるサービス

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 身体障害を持った人に対して使えるサービスとして、下記のようなものが考えられます。

身体障害を持つ人達が利用できるサービス

・障害福祉サービス
・身体障害者福祉手帳
・障害年金

 これらも、下記の知的・精神障害にて解説させていただいているものとほぼ同様です。

 身体機能の障害があれば当然働くことが困難になるケースも多くあるため、年金の受給も視野に入りますし、就労をするにしても就労継続支援等の、福祉的就労を行うこともできます。

 また身体障害は、杖や車椅子などの専用の道具が必要になる場合もあります。そんなときも、「福祉用具」については貸与できるサービスも場所によっては整備されていることがあります。

 身体障害を持った方は、特に後天的に障害を持ってしまった人は自分の障害にあった仕事で「一般就労」を続ける方も多くいるとされています。

 最近ではコンピュータやネットワークの発展により、体の一部分に障害があっても問題なく仕事を続ける事ができるケースもあるようです。

 そのように、自分の身体障害の程度や気持ちに合わせて、生活の質を向上させていくことが大切になります。

まとめ

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 今回は身体障害についてまとめさせていただきました。この記事をまとめると、下記のようになります。

本記事のまとめ

・身体障害は肢体不自由だけではなく、視覚や聴覚、言語機能、内部障害などすべてのことを示している
・身体障害は持ったタイミングで精神的な負担が大きくなる傾向がある
・身体障害を持ってしまっても、コミュニケーションツールや仕事内容によって一般的な就労を継続できる場合がある
・身体障害により仕事を続けることが難しくても、福祉サービスの利用を検討する事ができる

 身体障害は「自分がしてきたことができなくなる」や「そもそも最初からできないことがある」という、非常に重篤な状態ともいえます。

 福祉はその人それぞれの生活の質を向上させていくことを、最も大きな目的の一つとしていますが、そのためには一人ひとりの配慮や優しさが絶対に必要になってきます。

 この記事は「身体障害を持っている人」も、「その人を支援する周りの人」も対象にしています。この記事により少しでも、多くの人が適切なサービスを受けることができるよう、願っています。

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