【社会福祉士】科目:社会保障の解説【国家試験解説】

このページは「社会福祉士・国家試験」の各科目の解説になります。ご覧になる前に、下記の「目次ページ」をご覧いただけると幸いです。

今回は「社会保障」について解説になります。

この記事を書いた人
寂 あまどい

重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。

社会保障の概要とは

Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

 社会福祉士・共通科目の6つ目の科目となるのが「社会保障」となります。

 この科目で「社会保障」という名前からも分かる通り、医療や年金、公的補助、雇用保険などの幅広い対象に関する内容を問われるものであり、「社会保障制度全般に対して問われる科目」となります。

 具体的な内容については下記のようなものが問われます。


  • 日本における社会保障や医療保険の歴史について
  • 公的医療保険に関すること
  • 労働保険に関する全般の内容について
  • 年金に関する基礎的な概要
  • 社会保険制度に関する全般的な内容と事例問題

 文字通り「社会保障」に関するあらゆる内容を問う科目であり、社会福祉士の試験の中ではかなり実践的なものに加えて、社会保障全般に関する内容を問うという非常に幅広い範囲を持つ科目となります。

 社会福祉士として学ぶべき知識の集大成的な内容となっており、その範囲と実践性については目を見張るものがあります。

 しかしながら、試験の範囲としての科目として見た場合、この科目はあらゆる社会保障に関する内容を対象とした範囲と、直近の社会情勢を反映した内容から、この国家試験の科目の中でも最高レベルの難易度を誇ります。

 その膨大な範囲と難易度から、「この科目だけ点数を取得できずに不合格になった」というケースも見られる科目になるので、しっかりとした対策が必要になる科目です。

社会保障の特徴

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 社会保障の問題的な特徴は、具体的には下記のようなものがあります。

社会保障の問題的な特徴

・問題数は「問題49」から「問題55」の7問
・問われる内容から正しい記述や設問を当てる問題が中心
・近年の社会情勢を反映した時事問題や事例問題なども一部含まれる
・事例問題はあらゆる社会保障に関わる実践的な内容が中心

 科目の問題的な特徴は上記の通りですが、この科目はとにかく現実の社会保障における必須知識を軒並み要求する問題がほとんどであり、様々な方面の知識を要求する特徴があります。

 また、この科目は一つの問題において、複数の方面の知識を前提とした設問が組まれることが度々見られます。
 下記は第36回・51問「社会保険の負担に関する記述」についてです。



 この設問では、それぞれの設問に「国民年金」「介護保険」「後期高齢者医療制度」「障害基礎年金」「国民健康保険」というそれぞれ独立した制度を問います。

 この設問に対して対応するためには、上記の内容全てにおいて潤沢な知識を持っている必要があります。

 後述しますが、この科目の難易度を象徴する特徴と言えるでしょう。

 また、上記の内容は他の設問に対して使える知識でもあるのですが、それぞれがこのような幅広い知識を求めてきます。

 そのため、この科目独自の対策を練る必要があります。

社会保障の重要度(☆☆)

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 この科目は、前項の「福祉行財政と福祉計画」と同じく内容がかなり実践的なものとなっています。

 しかしながら、この科目はその難易度の高さに加えて、問題数も7問と標準的なことから、合格の重要度としてはやや下がって「☆☆」となります。

 とにかくこの科目は点数が取りにくい科目であり、「この科目で点数を獲得しよう」と思うと、他の科目でも十分点数を取ることができる様になっているかもしれません。

 合格の一つの戦略として、「他の科目を中心に勉強して、この科目は1点以上の獲得を目指す」という方法を取ることが視野に入るほどの科目になります。

 社会福祉士の試験における一つの重要な要素として「特定の科目で0点を取ってしまった場合不合格になる」というものになります。

 この科目はいわば、その危険性がかなり高い部分になります。そのためこの科目では「いかに0点を避けるか」という部分が大切になってきます。

 そのため、合格の一つの重要度としては、やや格下げとなります。

 ただし、この科目の問われる内容は非常に実践的なものであり、「実生活に役に立てる」という意味では重要度は非常に高いものとなります。

 特に社会保険の実際の使用に関する内容については、日常的に使用する知識としては、かなり有用なので、そのような意味では勉強する価値は高い部分になります。

社会保障の難しさ(☆☆☆)

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 前述している通りこの科目は、社会福祉士・国家試験の中でも最高レベルの難度を誇り、評価としては最高難度で「☆☆☆」とさせていただきます。

 もはや説明不要かと思われますが、この科目の難易度の高さは下記のようなものが挙げられます。

社会保障の難易度が高い理由

各設問における必要知識の多さ
・複雑な社会保険制度の細かな範囲を尋ねる範囲の広さ
・直近の時事的な内容から出題される問題

 大まかにこの科目の難しさを引き上げている特徴として、「範囲の広さ」と「設問あたりに必要な知識量の多さ」にあります。

 この科目において、最低限必要となってくる知識は下記のものが挙げられます。


  • 医療保険制度
  • 介護保険制度
  • 労災保険と雇用保険
  • 年金制度

 日本における代表的な社会保障制度は上記のようなものがあり、この後に出てくる科目でも、より専門的な部分が出題されるのですが、この科目はそれらがかなり複雑に絡みます。

 そのためこれらの内容を中心に勉強することになるのですが、上記の内容はどれも専門科目として勉強が必要なものとなっています。

 そのため、上記の内容を学んだ上で問題に対応していく流れが多くなるでしょう。

 上記の内容はどれも複雑なうえ、特に「年金制度」は基礎年金と厚生年金など、制度そのものがかなり複雑なので、丁寧な勉強が必要になります。

社会保障の問題の特徴(☆☆)

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 この科目は確かに内容そのものはかなりの難問ぞろいですが、問題の特徴として下記のようなものが挙げられます。

社会保障の問題について

・直近の社会保障費用統計や人口問題の研究所の人口推移など、統計から読み解く問題がある
・社会保険や公的扶助に関する問題は高頻度で出題される
・各社会保険制度の費用的な部分や基本的な知識が求められる傾向がある
・社会保障制度を実際に利用するときを想定した事例問題

 上記のように、この科目の問題の傾向としては、実は各年であまり大きく変化しないという特徴があります。

 この科目における唯一の得点につながりやすい部分はここであり、しっかりと対策を立てて、傾向を掴むことで点数アップに繋げる事ができます。

 とはいえこの科目は、必要としている知識量が非常に多いため、傾向を掴んでも点数アップに繋がる水準まで知識を高めることが難しい科目になります。

 あくまでも傾向を掴むということは大前提であり、必須知識をつけていくことが得点アップに繋がります。

 またこの科目は試験前日に、その年の「社会保障費用統計」について確認しておくと良いでしょう。下は今年の社会保障関係費用の内訳です。

厚生労働省:社会保障と財政より「政府一般歳出と社会保障の関係」
厚生労働省:社会保障と財政より「政府一般歳出と社会保障の関係」

 社会保障費用統計は、その年の社会保障費用の内訳などを知ることができるのですが、社会保障の科目は「社会保険に関する記述」を解く助けになるでしょう。

 もちろんこれだけでは付け焼き刃でしかありませんが、最期の補助としては十分機能するので、試験前日の勉強方法としておすすめです。

総合性(☆☆)

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 この科目は総合的に考えると「☆☆」とさせていただきます。

 前の科目である福祉行財政と福祉計画と同じように、この科目は問題の理解の時点から、前提知識として社会福祉士の全般的な知識を要求しています。

 そのため、科目そのものの難易度と相まって、合格に寄与するという面でみれば重要度はその分下げています。

 しかしながら、この科目のなかで問われる内容は社会福祉士の試験の中ではかなり重要なものが多くあります。

 前提知識を要求しているので、勉強する順序としては後半になることは確実ですが、医療保険や年金など、他の部分でも重要度の高い内容を実践的な問題として出題してくるので、最後の追い込みとして活用する場合は非常に効果的です。

 「特徴」のところでも触れているように、例えば社会保障関係費用などの内訳などについては、それを把握しているだけで他の科目でも活かすことができる内容であるため、試験の前日に振り返りで学ぶものとしては最適です。

 ちなみに筆者も、試験直前の最後の夜は、この社会保障の科目を中心に勉強していました。

 そんなところから、総合性は福祉行財政と福祉計画から一つあげた「☆☆」としました。

科目の勉強方法

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 この科目の勉強方法としても、前の科目である「福祉行財政と福祉計画」と同じ進め方で良いでしょう。

 同じように前提となる知識を理解していないといけないため、下記の科目を先に勉強しておくと良いでしょう。

事前に勉強が必要な科目

・保健医療サービス
・高齢者に対する支援と介護保険制度
・就労支援サービス

 これらの科目は、社会保障の問題において前提とする「社会保険」や「介護保険制度」などの重要な制度を学ぶことになります。

 更に上記の内容は、前述の制度を理解しておくことでより円滑に勉強を進めることができます。

 上記の内容をしっかりと理解したうえで社会保障をすると、内容についてもある程度のまとまりを持って理解することができます。

 ある程度内容について理解できるようになってから、下記の流れを行うことができます。

①:過去問を中心に勉強を始めていき、問題の内容について理解していく
②:過去問から、自分の理解できていない部分や弱いところをレビューブックで知識を補完
③:引き続き過去問を安定した点数を取れるまで繰り返す

 前提知識を必要とする問題だけあって、スタート地点に立つまでが大変なのですが、しっかりと学習して点数に貢献しましょう。

まとめ

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 今回は「社会保障」について解説させていただきました。

 まとめると下記のようになります。

社会保障のまとめ

・科目の重要度 ☆☆(内容そのものの重要性は高いが、基礎力を前提にした科目であり重要度は落ちる)
・科目の難易度 ☆☆☆(基礎知識を要求し広範囲を試験範囲とするため非常に難しい)
・問題の特徴  ☆☆(範囲が広く時事問題も多いがある程度の傾向がある)
・総合性    ☆☆(内容の重要性は高く、他の部分にもまたがった範囲であるため、重要性は高い)

 この科目は社会福祉士の試験の中でも最も高いと言える部分になり、特に最後の追い込みに使う科目としては合格に寄与する科目となります。

 この科目は特に0点の可能性が出てくるものなので、しっかりと対策をして勉強しましょう。