【生活保護】生活の最後の砦・生活保護の申請の流れと制限について【現役専門職が解説】
※この記事は「厚生労働省」の記事を参考に作られています。福祉サービスは自治体により内容が異なるため、実際の福祉サービスの利用の際には必ずお住まいの自治体にお問い合わせください。
日本における最後のセーフティネットと言われているものが「生活保護」です。
生活保護と聞いて、あまりいい印象のない人も多くいるでしょう。
しかしながら、生活保護は「どうしようもなくなった時」の最後の手段として、日本が整備している大切な制度の一つです。
このサイトでは過去に生活保護について、「原理・原則」という観点から生活保護について解説させていただきました。内容についはそちらのページを御覧いただきたく思います。
今回はそんな生活保護の申請の流れや、実際に生活保護にはどのような扶助があるのかを解説させていただきます。上の記事よりも、具体的な内容を解説していきたいと思うので、興味のある人は最後までご覧いただければ幸いです
重度重複障害児者の生活介護事業所にて3年の生活支援員を経験後、地域活動支援センターにて社会福祉士・精神保健福祉士として勤務。発達障害・精神障害を持つ利用者との関わりが主であり、障害福祉に関しての研修も担当しながら経験を積んでいる専門職3年生。ブログを通して障害福祉に関する情報を発信している。
生活保護について
生活保護とは、先述の通り「日本の最後のセーフティネット」として、貧困状態であっても、国が最低限の生活を保障するために必要な支援を受けることができるものです。
生活保護の基本的な制度や、根本的な考え方については上述したとおりなのですが、その中でも特に保護の受給に関係があるものは下記になります。
- 保護の補足性の原理
- 申請保護の原則
- 基準及び程度の原則
各種の原理原則については、上述のページを御覧いただきたいのですが、これらはそれぞれ、以下のようなことを言っています。
・生活保護は自分で申請しないと受給することができない(申請保護の原則)
・生活保護は資産や能力、他の制度の活用、扶養義務者の扶養など、他に利用できるものがあればそちらを利用する(保護の補足性の原理)
・生活保護の生活の基準は「必要最低限」と定められており、そのなかで生活をする(基準及び程度の原則)
このような側面から、生活保護は「最後のセーフティネット」と呼ばれています。
基本的には「雇用保険」や「年金」「手当」など、他の支援制度を利用したうえで、「扶養義務者」などがいる場合はその人に扶養してもらうことを考え、それらをすべて活用しても生活に困窮した場合に初めて利用できるものとなります。
日本には実は非常に多くの生活支援の制度があります。
それらをまず最初に確認したうえで、それでもダメだった場合に使う事ができるのが「生活保護」となります。
このように、生活保護を受給するためには、いくつか大きな課題があります。
生活保護の申請の流れについて
生活保護の受給の流れは、具体的に下記のような流れになります。
1.事前の相談
2.保護の申請
3.保護費の支給
当然ですが、保護を受けるためには下準備として様々な提出書類や相談を経てその妥当性が考えられます。そのため上記のような流れをたどります。
そうして様々な判断がなされた後に実際の支給となります。それらを調査をするのは各自治体ごとに異なっているのですが、多くの場合は地域を所管する「福祉事務所」が主導となって行います。
具体的に上記のそれぞれは、下記のような流れとなります。
1.事前の相談
生活保護制度の利用を希望する場合、各自治体の生活保護の相談窓口を利用します。
ここでは下記のようなことが話されます。
・生活保護制度の利用希望者の現在の生活・経済的状況
・生活保護制度そのものの説明
・現在の生活状況から、生活保護以外に利用できる制度の活用方法
この「事前の相談」では、生活保護の申請をする前段階に当たり、ここで「生活保護が本当に必要なのか?」や「生活保護以外に活用できる制度をすべて活用しているのか?」ということについて、専門的な立場から精査されます。
ここである程度「妥当性がある」と判断されれば、保護の申請のための準備に入ります。
2.保護の申請
事前の相談を経て、保護の必要性が判断された場合に実際の保護申請へと移ります。
保護申請はもちろんそれぞれの個人が行うべきものなのですが、用意しなくてはいけない書類も煩雑であり、資産的な調査なども必要になってくるので、多くの場合は各地域の生活保護担当者とともに申請を進めていくこととなります。
そんな生活保護の申請ですが、下記のようなことがなされるとされています。
・生活状況を把握するための実地調査
・預貯金や保険、不動産などの資産調査
・扶養義務者による不要の可能性についての調査
・年金や社会保障給付、就労にによる収入の調査
・就労の可能性の調査
上記の内容は「事前の相談」の時に話した内容について、「裏を取る」ような流れになります。
具体的にその人にどのような資産があり、それらを活用すれば生活ができるのであれば、活用したうえで首が回らなくなった時に利用するような運びを促される場合があります。
なお、この時にその人の収入状況や資産の状況などは徹底的に調べられることとなります。
ここでその人が持っている資金はある程度把握されるので、「資産を隠して保護の申請」ということは不可能となります。
当然、ここで本人が知らなかった資産が判明する場合もあるため、申請の上での調査は絶対に必要になります。
3.保護費の支給
保護の申請における調査によって「生活保護が必要である」と正式に判断されれば、保護費の支給が始まります。
具体的な保護費は、代表的なもので下記のようなものがあります。
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 医療扶助(直接医療機関へ支払い)
- 介護扶助(直接介護事業者へ支払い)
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
これらの扶助を受けることができ、生活の多くの場面で実費での支給を受けることができます。
ただし、これらの扶助は下記のような制限が生じることとなるので、十分に理解が必要です。
・保護費は収入や年金などを差し引いた分が支給されるため、収入があった場合は申告が必要になる
・世帯に応じて、ケースワーカーによる年数回の訪問調査を実施する
・就労の可能性がある場合は、就労に向けた指導や助言を行う場合がある
上記のことから分かる通り、基本的には生活保護は、特に若年層において「最終的に雇用に繋がり自立していく」ということが目標になります。
そのため、ケースワーカーより積極的な就労への意思確認がなされる場合があります。
生活保護の制限
生活保護は何度も書かせていただいた通り、「最終手段」となります。
生活保護を申請し、受給が決まった場合はもちろん生活に必要な費用を実費で支給されるのですが、当然そこには大きな制限がかかることとなります。
生活保護を受給する場合、その制度や制限について十二分な理解が求められ、そこから外れるような行動をした場合は保護の取り消しを受ける場合もあります。
生活保護においてかかる制限は、具体的には下記のようなものがあります。
・生活に不必要な資産を所有する(障害の有無によって必要であると判断されたものは別)
・収入の際には必ず申告をしなければならない
・保護費を利用して借金や住宅ローンを支払う
・ケースワーカーの指導を受け入れない、もしくは拒否するなどはできない
生活保護において、上記のことは「制度の原理から考えて死てはいけないこと」となります。
これらを怠る、もしくは破る場合は、最悪の場合は保護の廃止を受ける可能性があります。
生活保護を受ける場合、これらの制限をしっかりと理解したうえで受給することとなりますので、しっかりと制度の概略を理解してから受給を検討しましょう。
まとめ
今回は生活保護について、具体的な流れについて解説させていただきました。
まとめると下記のようになります。
・生活保護は「最終手段」であり、申請の際には資産の処分や扶養できる人がいるかを調べられる
・調査により「生活保護を受けることが妥当」と判断されれて初めて申請ができる
・生活保護を受けている以上は、収入があった場合は報告しなくてはいけない
・生活に不要な資産を持つことはできず、ケースワーカーの指導を受けなければならない
・してはいけないことを続けると保護の廃止を受ける可能性がある
生活保護はその制度的な内容から、厳しい意見を受けることが多くあるかもしれません。
しかしながら、生活保護は日本において「最後のセーフティネット」と呼ばれるように、国家が私たちの生活を保障する最後の砦となります。
制度の概略を理解していると、この制度がいかに大切であるかがよりイメージしやすいかもしれません。とはいえ、生活保護を受けるということはそれだけ自由な人生設計が難しくなるため、あくまでも「最終手段」としての捉えをしておくことが大切になります。
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